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一筋の光(2016.12)

成長の限界

先日、2015年国勢調査の確定値が発表された。
95年前の調査開始以来、国勢調査での初めての人口減少となった。
いつかはとは思っていたが、ついに来た。
あらためて、わが国はいよいよ本格的な少子・高齢化に突入した
という現実を突きつけられた。
変曲点を迎え、国の成長が止まったのである。
2015年はわが国の成長の限界だったのである。

「成長の限界」といえば、ローマクラブが1972年に発表したレポートである。
「成長の限界」ではいくつかのシナリオを上げ、
「なんら抑制のないまま成長を続ける」シナリオでは、
「やがて世界の資源供給は行き詰まり、2030年までには経済破綻に続き人口減少が起こり、
人類衰退が始まる」と予測した。
その2030年まであと14年である。

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1972年(昭和47年)に発表された「成長の限界」は、
同年に国連で採択された「人間環境宣言」とともに地球環境問題の端緒となった。
その衝撃的な内容に世界中で賛否両論が巻き起こり、
1992年の地球サミットのリオ宣言、気候変動枠組条約、生物多様性条約、アジェンダ21
につながる大きな流れとなった。

オーストラリアの物理学者グラハム・ターナーという人が、
「成長の限界の検証」というレポートでこのシナリオを検証し、
ほぼシナリオどおり推移していることを明らかにした。
「成長の限界」の予測どおり、
東京オリンピックの10年後には経済破綻が起こり、人類衰退が始まるのだろうか。

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1970~2000年(グレーの部分)の実測値(太線)と、
「成長の限界」での予測値(破線)とを重ねてみると、
ほぼシナリオどおりとなっている。
出典:Graham Turner.Looking Back on the Limits of Growth(成長の限界の検証)

なんか、ちぐはぐなんだよなあ

ところで、先日11月8日、我が国はばたばたと、そしてようやく、パリ協定に批准した。
2030年度に26%削減との目標である。
TPPなどそれに優先する政治課題があるということで、
なかなか対応できなかった(しなかった)。
早くしなければという声がやっと政府内に起こったが、
その理由は、今後COPでわが国がイニシアティブをとれないから、
わが国が関与できないシステムがグローバルスタンダードになると困るからだという。
ちょっと違うんじゃないかなあ。ちっちゃいよね。
それに優先して取組んだTPPは、
あっと驚くトランプさんの大統領就任で吹き飛んでしまったのも皮肉なことである。

2014年4月、東日本大震災後初の懸案の「エネルギー基本計画」が閣議決定された。
そこでは原子力発電を「重要なベースロード電源」とすることなどがうたわれ、
2030年の電源構成案では原子力の比率を20~22%としている。
一方、政府は原子炉等規制法で原子炉を40年で廃炉と定めた。
例によって、条件を満足すれば20年の延長可能の但し書き付きである。
(日本の法律は本文よりも但し書きが重要である)

問題は、この40年寿命で計算した場合、
2030年度の原発比率は15%以下となり、前述の20~22%に届かないのである。
明らかな齟齬があるのである。
これを例外規定の20年延長の確信犯とみるか、政府内での調整不足とみるか。
しかし、日本の官僚はそんなにバカじゃないからねえ。
そして本年3月、政府は地球温暖化対策推進本部(本部長:安倍首相)において、
2050年になんと!80%削減の「地球温暖化対策計画(案)」をようやくとりまとめたのだ。

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電力需要に対応した電源構成。原子力は「重要なベースロード電源」なのだ。
出典:経済産業省HP

本当にできると思っているのか

しかし、今世紀後半に温室効果ガス排出量を実質ゼロを目指すというパリ協定や、
2050年に80%削減する「地球温暖化対策計画(案)」について、
みんな本当に実現できると思っているのだろうか。
温室効果ガス排出量ゼロということは、イコール化石燃料を使わないということである。

発電は原発か再生可能エネルギーとなる。
原発を何十基も稼働させる状況が今の日本で今後本当に可能なのだろうか。
原発に匹敵するだけの再生可能エネルギーを整備するのは本当に可能なのだろうか。
原発1基分の発電量を得るためには、
太陽光発電ならば東京の山手線の内側とほぼ同じ面積を必要とする。
原発は強力、再生可能エネルギーは微力なのだ。

内燃機関の自動車はなくなり、都市ガスやプロパンガスは家庭からなくなる。
そんなことができるのだろうか。
石油メージャー、ガス会社、鉄鋼メーカーなどなど、消えていくのだろうか。
OPECの動向が世界経済を左右し、
かつて「黒いダイアモンド」「鉄は国家なり」といわれた
これらの巨大な産業が崩壊していくのだろうか。

これはまさに第二次産業革命だ。
エネルギーのあり方、ひいては社会・経済のシステムが根本的に変わるのだから。
石油・石炭・天然ガスがない社会は、正直なところ今の僕には想像できない。
みんなどう思っているんだろう。
本気でそう思っているのか。

かすかな光

「我々は利益のためにクルマをつくっているのではなくて、
クルマをつくることによって世の中の役に立ちたいと考えています」

トヨタ自動車の会長の言葉である。
最近接した言葉の中で最も心に響いた言葉である。

そうなのだ。「世間よし」なのだ。
僕たちは、世の中の役に立にたつために生きているのだ。
一人ひとりも、会社も、国家でさえも、存在理由は同じだ。
一人は全てのために、全ては一人のために。

自動車メーカーが化石燃料から脱却し、
資源採取・運搬・製造・使用・廃棄の全てのライフサイクルでCO2排出をゼロにする
という不可能と思われることを目指すべき目標として打ち立てている。

「今」から発想するのではなく、「今」にとらわれず、本来あるべき姿を設定し、
そのために必要なことを考えていく…バックキャスティング。
そして、そのために必要な、一番大切にしなければならないものを表明し、それを確認する。

捨てたもんじゃないよ。
世界を代表するメーカーの会長が言ってるんだ。
第二次産業革命はできるんじゃないかと、少し思い始めている。
来年も、このかすかな光が消えることなく少しずつでも確かなものになっていけばと思う。

来年もよい年でありますように。

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