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僕は、忘れない

ひどいじゃないか

妻の深夜の友は夫ではなくテレビ、という家庭は、
話を聞くにどうやらうちだけではなかったようだ。
特に、ショート・フリーと2日にわたるフィギアはどうしようもない。
スノボだ、ジャンプだ、フィギアだと言っているうちに、
最後の女子フィギアをクライマックスに、とうとうソチも終わってしまった。
楽しうてやがて悲しき祭りかな・・・

4年に一度、ごく限られた選び抜かれた人だけが参加できるオリンピックは、
一つひとつの競技にドラマがある。
一人ひとりの選手に重ねてきたドラマがある。

今回のハイライトは、間違いなくフィギアだろう。
決めのポーズががくがくと震え、涙が溢れる。
何度見ても、もらい泣きするよねえ。
真央ちゃんは、メダルよりずっと大切なものがあることを僕たちに教えてくれた。

おめでとう、羽生くん。
高橋くんも町田くんもよくやった。
2月16日の新聞は、3人の写真があふれた。
尖閣だ、歴史認識だと、
ここのところ「日本」でうきうきするような話がとんとなかったので、
一気に噴出した感じだ。

おめでとう。
おめでとう・・・でも僕はひとつだけ引っかかる。
どうしても気になる。
それは、小塚くんのことである。

フィギア男子のオリンピック出場の最後の1枠は、
全日本選手権3位の小塚くんではなく、5位の高橋くんとなったのだ。
もちろん、これまで日本の男子フィギア界を引っ張ってきた高橋くんへの
敬意と報恩は報われるべきで、それは変わるべくもないのだが。
もちろん、小塚くんは選考に異論を唱えることもなく、
3人を祝福し、エールを送っているのだが。

小塚くんは、(対マスコミではなく)自分の心の中では何と思っているのだろう。
もし、自分が小塚くんだったらどう思うだろう。
みんな、もう、すっかり小塚くんのことなど、どこかへ飛んでいってしまっているのだ。

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おめでとう、羽生くん。
しっかりとした受け答えには意志の強さと性格のよさ、頭のよさを感じた。


沙羅ちゃんは残念だった。
追い風だの、緩いジャンプ台だの競技のことはさておいて、
皆さんは沙羅ちゃんがいつ帰国したかご存知だろうか?
沙羅ちゃんは2月14日に(ひっそりと)帰国したのだ。
フリーに向かう男子フィギアの3人の記事があふれる中、
2月15日の新聞には沙羅ちゃんの帰国が小さく報道されていた。
小生が見る限り、テレビでの報道はなかった。

何ということだ!
あれだけ大騒ぎしておいて。
メダルが取れたか取れなかったかなんか関係ないだろう。
あれだけ大騒ぎしておいて。
ひどいじゃないか。

もう忘れたのか

ひどいといえば、3.11である。
今月であれからもう3年がたとうとしている。
ひどいというのは被害のことじゃない(もちろんそれもあるが)、
人の心のことである。

原発建屋が目の前で水素爆発する映像を目にして、
誰もがこりゃヤバイと思ったはずだ。
あの時、震災直前の工事の不手際で水抜きされなかった水が残っていたという、
たまたまの偶然で4号機の使用済み核燃料が冷やされて
メルトダウンしなかったという奇跡がなかったら、
今頃は首都壊滅から未だ立ち直っていないかもしれない。
もう原発はいらないと少なくない人が思った・・・はずだった。

直接被害を受けた人はなおさらだ。
たとえば、福島第一原子力発電所の位置する大熊町は、
今でも町民11,000人全員が避難のため全国各地に離散している。
平成24年12月の警戒区域の再編後も
町民の約95%が居住していた地域が「帰還困難区域」となったため、
町としては、涙をのんで「5年間は帰町しない」判断を下さざるを得なかったのだ。

確約されてもいない5年後にいったいどのくらいの人が戻ってこれるのだろう。
高齢者にとって5年の歳月は長すぎる。
大熊町だけではない。
平成25年12月末時点で、約24,700人、約9,200世帯の人々の居住地が「帰還困難区域」に指定され、
今も、そしてこれからも住み慣れた土地を奪われているのである。
いったい誰がこんなことをしたのだ。

町や村が壊れていく。
という現実にどのくらいの人が想いを馳せることができているのだろうか。
あの時は、被災者の方々に対して
日本全国の人が自分にできる事はないかと想いを寄せたのだが。
人間がコントロールできないものを人間が持ってはいけないと少なくない人が思った
・・・はずだった。

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「帰宅困難区域」とは、国の原子力災害対策本部によれば「長期間、具体的には5年間を経過してもなお、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのある、現時点で年間積算線量が50ミリシーベルト超の地域」であって、「同区域においては、将来にわたって居住を制限することを原則とし、線引きは少なくとも5年間は固定する」こととしている。
(資料:福島県ホームページ)


昨年12月、資源エネルギー庁は「エネルギー基本計画に関する意見(案)」をとりまとめ、
原発を「基盤となる重要なベース電源」として位置づけた。
しかし先日、諸々の批判を受け「重要なベースロード電源」に修正した。
「基盤となる」がとれ、「ベース電源」が「ベースロード電源」になった。
言葉のアヤはいろいろあるようだが、ここでは話題にしない。

火力発電のための燃料購入による電気料金の高騰と、
それによる経済の圧迫は直接企業経営や国民生活に効いてくる。
あの時はそう思ったけど、経済が立ち行かなくなったら元も子もない、終わりじゃないか。
みんなも、会社がつぶれ、生活できなくなったら困るだろ。

2020年の東京オリンピック。
素晴らしい、楽しみだなあ。
と大熊町の人たちは思っているだろうか。
それとこれとは別の話だけど、ひどいじゃないか。
もう忘れたのか。

忘れられた日本人

日本人は、昔から、弱いもの、虐げられたもの、悲運なものに想いを寄せてきた。
菅原道真、源義経、楠木正成、赤穂浪士、西郷隆盛・・・みんなそうだ。
細い体の先代貴ノ花が小山のような高見山に土俵際まで寄り立てられ、
徳俵に足がかかって弓なりになってこらえたあげく、
倒れこみながらうっちゃって逆転。
痩せ蛙負けるな一茶ここにあり。
そして日本人は、昔から、勝者以上に敗者に心を寄せてきた。
勝者は称えるが、それ以上に敗者のことを想いやってきた。

海外で活躍する日本人の互助組織である和僑会の創始者の筒井修氏によれば、
何かで困っている人がいるとき、
中国人は身内以外には何もしない。
欧米人はチップを要求する。
しかし、日本人は自ら進んで無償で行動するとのことである。

「日本の宿 おもてなし検定委員会」によれば、
「おもてなし」のひとつの典型である日本旅館においては、
「おもてなし」とは、提供する4つの商品(施設・設備、お料理、接待、周辺の環境)を
次の4つの心と行動によってお客様に提供することだそうである。

 1. お客様の立場に立って考え
 2. お客様の望むものを
 3. お客様の望む時と場所で
 4. 心をこめて提供する

そして、そのことを通じて「おもてなし」の最終目標である、
お客様の「より大きな満足と感動」を実現することだそうである。

滝川クリステルさんのスピーチで話題になった「おもてなし」とは、単なる歓待ではない。
相手のことを考え、
相手が望んでいること、
もしくは相手は気づいていないがこうされると気持ちがいいことや心が和むことを、
おもんばかり、
それをさらりと何気なく、
あたりまえのように、
しかし心をこめてやる心遣いと行動である。
どこへいったのだ。
想いやる心、おもてなしの心は。

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こんなのがあるんだ。
求める「おもてなし」の最高レベルは、「お客様に『感動』していただける」こと。
(資料:日本の宿おもてなし検定・公式ウェブサイト)


僕は忘れない

僕たちは、失いかけているのではないだろうか、想像力を。
あの人たちはどうなっているんだろう。
ああなれば、こうなる、だからこうする。
という想像力を。
そして、その想像力は、強いものよりも弱いものに、
勝者よりも敗者に向けられるべきものだ。

僕たちは、忘れかけているのではないだろうか、思考力を。
目の前の現象にとらわれて、かつて心を砕いて考えたことを。
あの時、ほんとうに心からそう思ったのに、
今起きていることに流されて、
あるべきことを考えることを忘れてしまっているのではないだろうか。

僕は忘れないよ。小塚くん、沙羅ちゃん。
僕は忘れないよ。大熊町そして被災地の皆さんのこと。
僕は忘れないよ。僕の胸の中にしまってあるたくさんのこと。

あの時、同じ花を見て、美しいと言った二人の心と心は今はもうかよわない。
あの素晴らしい愛をもう一度。

| コラム | 10:48 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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| | 2014/03/29 19:07 | |















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