fc2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

紅葉狩り(2023.11)

モミジとカエデ

紅葉の季節になってきた。
紅葉は「こうよう」だが「もみじ」でもある。
モミジは、もみじ饅頭は、言わずもがな広島県の木であり、広島県の花でもある。
県によれば、県の花は正式に決められていないが、
宮島などで県民になじみが深いことから、モミジを県の花としているそうだ。

しかし待てよ、モミジに花なんかあったっけ。
プロペラのような実がなるから、花はあるのだろうけど。
モミジは風媒花で、花は咲くけど小さく目立たない。

image002_20231031162626e1e.jpg
饅頭になるぐらいモミジは広島のシンボルなんじゃけぇ。

モミジはムクロジ科(旧カエデ科)カエデ属の植物である。
では、モミジとカエデはどう違うのか。
両者は植物学的には同じもので、
一般的には葉の切れ込みが深いものをモミジ、浅いものをカエデと呼んでいる。

しかし、そもそもは、カエデは葉の形がカエルの手に似ていることから、
「カエルテ」転じて「カエデ」となったもので、昔はモミジもカエデと呼んだようだ。

モミジという言葉は「揉み出づ」からきたそうだ。
すなわちモミジとは何の関係もないベニバナの花を水の中で揉んで生地を染めたことに由来する。
昔から染色に使われるベニバナの花は黄色いが、灰汁の作用により生地は赤く染まる。
すなわち、黄から赤に色が変化するのだ。まさに紅葉だ。
モミジの初出は万葉集で、万葉集ではモミジのほとんどに「黄葉」の字があてられたそうだ。
当時は赤変より黄変に光が当たっていたのかな。

モミジあれこれ

日本の古典で紅葉といえば、まず思い出すのが百人一首の次の歌である。

 奥山に 紅葉踏みわけ鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき
 
鹿と紅葉はこの歌により、完全にセットになった。
まさに花札の鹿、「猪鹿蝶」の鹿である。そして、モミジとは鹿肉のことである。
一方、ボタンは猪肉で、サクラは馬肉だ。

ところがである。
花札ではモミジは鹿だが、ボタンは蝶で、サクラは幕だ。
花札では馬は出てこず、猪は萩だ。
猟師のジビエと庶民の花札が違うのはあたりまえか。

食材としてのモミジはもう一つある。
それは鶏の足だ。
これは主にダシを取るのに使うが、
とある中華料理店でモミジだけがいっぱい入ったビニール袋を見たことがある。
もしもカエルの手でダシが取れたらそれをカエデと言ったかもしれないね。
余談だが、イチョウの別名は「鴨足」だ。これもその葉の形からきている。

image004_20231031162629767.jpg
「猪鹿蝶」は、花札のルールは知らない人でも言葉は知ってる出来役だ。
しかし、なんでこの3つの生きものの組み合わせなんだろう。

紅葉狩

さて、そのモミジを見に行くことを「紅葉狩り」という。
なぜ「紅葉見」と言わないんだろう。だって、花見とか月見とか言うじゃないか。
梨狩りとかリンゴ狩りは対象を得ることが目的だが、
紅葉狩りはモミジを持って帰るわけじゃないのに。

実は、紅葉は狩られたのだ。それはこんな話だ。
長野に鬼無里(きなさ)というところがある。
文字どおり鬼がいなくなった里なのである。
時は平安時代、紅葉という美しい女性が京から流されてこの地にやってきた。
紅葉は京が恋しくてたまらず、兵を集めて京に上がることを考えるようになった。
このような紅葉を人々は鬼女と呼ぶようになった。
それを知った朝廷は平維茂(たいらのこれもち)を差し向け、鬼女を討った。
紅葉は狩られたのだ。
それ以来、以前は「水無里」と呼ばれていたこの地は「鬼無里」と呼ばれるようになった。

この鬼女伝説は、室町時代に創作された能の演目「紅葉狩」から作られたようだ。
能の紅葉狩はさらに複雑な内容だ。
身分の高い女性(実体は鬼)が紅葉狩りをしているところに
鹿狩りに来た平維茂が出くわし宴に加わる。
酒に酔った維茂は寝込んでしまい夢を見る。
夢の中に八幡宮の神が現れ、美女に化けた鬼神を討てと告げて神剣を授ける。
目覚めた維茂の前に鬼が現れ、戦いの末に鬼を討伐する。

「紅葉狩」といえば、広島では神楽の演目だ。
前段では美しい女性だった鬼女が、後段では恐ろしい鬼に変身し、平維茂と大立ち回りを演じる。
広島の神楽は石見神楽が伝わったものだが、
戦後、安芸高田市で起こった「新舞」とよばれるものは、
豪華な衣装、スピードの速い舞、ドライアイスを使った演出など演劇性が高く、
独自の進化を遂げた。
紅葉狩はまさにそういった演目だ。

image005_20231031165142778.png
安芸高田市の神楽門前湯治村にある紅葉狩の平維茂と鬼女の舞の人形展示

五穀豊穣の神に捧げる

広島の神楽は出雲流神楽の石見神楽が伝わったもので、
出雲流神楽は大元神楽をルーツとする。
江津市桜江町に伝わる大元神楽は、神職によって舞われ、
託舞とよばれる神がかり託宣の古儀が伝承されている古い形を持つ神楽であり、
五穀豊穣をもたらしてくれる土着の農耕神である大元神に奉納するものである。
大元神を祀る大元神社は石見地方で多く見られる。
しかし、広島にも大元神社があるのだ。

image007.jpg
大元神楽伝承館の舞殿。中央の祭段には大元神の象徴の藁で作った蛇が祀られている。

広島の大元神社は宮島にある。
そう、その名のとおり宮島の大元公園ある神社だ。
大元神社は平清盛が厳島神社を再建する前からある古い神社なのだ。
宮島の大元神社の祭神は、土着の神である大元神ではなく、
保食神(うけもちのかみ)、国常立尊(くにのとこたちのかみ)、大山祇神(おおやまずみのかみ)だ。
しかし、そもそも保食神は五穀豊穣の神である伊勢神宮外宮の豊受大神のことであり、
農耕神である大元神と何ら変わりはない。

宮島といえば、紅葉だ。
宮島には五穀豊穣の神がいることも分かった。
秋も深まる頃、紅葉狩りの後、
宮島の紅葉谷でかがり火をたいて夜神楽をやってみたらどうだろうか。

 夜神楽や 焚き火の中へ 散る紅葉(一茶)

| 未分類 | 16:56 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://touwakankyoukagaku.blog33.fc2.com/tb.php/173-8ca0b3d7

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT