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命の中の命(2023.10)

「牛」とは何か

突然だけど、10月22日は「土用の丑の日」だ。
土用の丑の日は夏だけではないのだ。
丑の日は、日にちを十二支で数えたとき、丑に該当する日のことだ。
だから、丑の日は12日周期で回ってくる。

一方、土用は、季節の変わり目の立春・立夏・立秋・立冬の直前の約18日間を指す。
12日周期と18日なので、土用の丑の日は年に4回以上ある。
今年の土用の丑の日は,
1月19日、1月31日、4月25日、7月30日、10月22日、11月3日だそうである。
というわけで、「牛」の話がしたくてここまでの前振りなのだ。

牛は4つの胃を持っていて、食べた草を吐き出して反芻しながら消化している。
4つの胃は、焼肉屋では順に、ミノ、ハチノス、センマイ、ギアラである。
第4胃の「ギアラ」はあまり聞かない。
正確に言うと第4胃だけが胃液を分泌し、反芻するのは第3胃までだ。

4つの胃のうち第1胃は「ルーメン」といい、容量は150Lと最も大きい。
このルーメンには多くの種類のバクテリアや原生動物が棲んでいて、消化を助けている。
その数は、バクテリアが1mL中に100億匹以上、
原生動物が1mL中に50~100万匹もいるそうである。

これらの微生物が持つ酵素のおかげで、牛はセルロースを消化できるのである。
さらに、これらの微生物は死ぬと分解され、重要なタンパク質として吸収される。
草だけ食べていてもタンパク質が摂取できるのだ。

われわれ人間の腸にも多くの細菌が棲んでいる。
その数、1000種類、100兆個だそうである。
それを表現する「腸内フローラ」という言葉もある。
健康のためには、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を増やすこと、
善玉菌を増やすためにはヨーグルトやオリゴ糖を摂取することはよく言われる。

「牛」という動物は何なんだ?
食べ物を消化し、牛が生きるエネルギーを生み出しているのは、牛の胃の中に棲む微生物だ。
牛が食べているのではなくて、微生物が食べてるんじゃないのか。
牛が生きている以前に微生物が生きている。

外から形が見えるから牛だけど、
この「牛」と称するものは、便宜上「牛」と言っているけど、
その実体は微生物のかたまりではないのか。
牛は、微生物のただの入れ物にすぎないのではないか。

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牛が草を食べているのか、微生物が草を食べているのか

ミトコンドリアは呼吸している!

話は全く変わって、ミトコンドリアをご存じだろうか。
ミトコンドリアは核を持つ細胞(真核細胞)の中にある直径0.5 µm程度の小さな器官だ。
人間では、ミトコンドリアは1つの細胞に300~400個あり、
全身では体重の約1割を占めているそうだ。
60kg弱の小生の体の中には6kgのミトコンドリアがいるということだ。

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こんな小さなつぶつぶが僕たちの体の約1割を占めているなんて

ミトコンドリアは細胞の中で何をやっているのかと言うと、エネルギーを作り出している。
どうやってエネルギーを作り出しているかというと、
僕達が食べた食べ物は消化されて糖分(グルコース)などになるが、
これを分解して複雑な工程を経てATPなるものを大量に作るのだそうだ。
ATPは、アデノシン三リン酸というもので、あらゆる生物の細胞に存在し、
リン酸の分子がくっついたり離れたりする事でエネルギーを貯蔵したり放出したりしているそうである。

放出されたエネルギーは、アミノ酸などの生物に必要な分子の合成や運動、
細胞膜を介した分子の輸送などに使われるのだそうだ。
すなわちミトコンドリアは、
酸素や栄養素からATPとして化学エネルギーを取り出し、老廃物を排出している。
なんと、これは呼吸なのだそうだ。

呼吸は、肺やエラで酸素を取り込むこと(これを外呼吸という)だけでなく、
生物の細胞内で酸素や栄養素からATPとして化学エネルギーを取り出し、
老廃物を排出する一連の代謝反応を内呼吸(細胞呼吸)と言うそうだ。
自分で呼吸しているなんて、ミトコンドリアはまるで一個の別の生物のように見える。

その昔、地球には酸素はごくわずかしかなかった。
やがて藻類、そして植物が出現したことで、光合成により酸素が生み出された。
酸素というものは、酸化という言葉があるように、本来、物を破壊する性質の強いものだ。
しかし、このことは逆に言うと、強力なエネルギーを持っているということである。

植物が作り出した酸素の豊富な水や大気の中で、
生物はこの強力な酸素をエネルギー源として活用するように進化していった。
では、どうやって酸素をエネルギー源として活用することができたか。
それは、ミトコンドリアを細胞の中に取り込んだからである。

細胞内でミトコンドリアは呼吸する。
すなわち、炭水化物を酸化して二酸化炭素と水を排出し、その過程でATPが生産される。

ミトコンドリアはDNAを持っている!

ミトコンドリアは、細胞内で伸び縮みして動いているそうだ。
ミトコンドリアは別の生きものなのか。
ミトコンドリアは、細胞核とは異なる独自の遺伝情報-ミトコンドリアDNA-を持っており、
細胞内で分裂して増殖するそうである。
このミトコンドリアDNAは、ミトコンドリア内部だけに限らず、
生物の細胞全体の生命現象にも関与しているというから驚きだ。

さらに、細胞のアポトーシス(自殺)においても、ミトコンドリアは司令塔としての役割を担っている。
「細胞の自殺」と言うと物騒だが、
それは個体をより良い状態に保つためにあらかじめプログラムされ、積極的に引き起こされるもので、
例えばオタマジャクシがカエルに変態する際に尻尾がなくなることなどがこれにあたる。

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かの有名な二重らせん構造。たった4つの塩基で生物の遺伝情報が決まる。

命の中の命のつながり

ミトコンドリアは、ある種のバクテリアが別の生物の細胞の中に入り込んだことが始まりだそうだ。
ミトコンドリアが入り込んだのか、別の生物が採り込んだのか。
「共生」という言葉で済ませるには、その後の結果があまりにも大きすぎる。
だって、真核細胞を持つほとんどの生物はミトコンドリアなしでは生きていけないのだから。

人間はもとより、生きものってなんだ?
人間-私たち-が生きているのか、ミトコンドリアが生きているのか。
私たちのひとつひとつの細胞の中で、別の生きものが呼吸し、増殖して生きている。
胃の中に棲む微生物どころじゃない。
ありとあらゆる細胞に別の生物が棲んでいる。

一つの大きな命の中に、また別の多くの小さな命がある。
大きな命の命運は小さな命が生み出すエネルギーに委ねられている。

「私」って何だ。
「個」って何だ。
生きものの個体って何だ。
生きものの命って何だ。

全ての生きものの命は、生まれた時からその生きものだけじゃない。
命の中に命があって、みんなつながっている。

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