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スパゲッティの思い出(2021.8)

スパゲッティとパスタ

前回がインドカレーだったので、今回はイタ飯でいこう。
休日の昼飯は、スパゲッティを茹でて庭のパセリをたっぷりかけたカルボナーラか、
中華麺を茹でて庭のネギをたっぷりかけた汁なし担々麺にすることが多い。
自分でもよく飽きないなと思うけど、美味いのだから仕方がない。

ところで、スパゲッティとパスタの違いをご存知だろうか?
パスタは小麦粉を原料にいろいろな形に成形した食品の総称で、
スパゲッティはこのうち細長い棒状に成形したパスタ…すなわち、ロングパスタ…
のことをいうのである。
スパゲッティはパスタの一種なのである。スパゲッティ<パスタなのである。

ロングがあるなら、当然のごとくショートもある。
ショートパスタはマカロニのたぐいである。

実は、スパゲッティには確固たる定義がある。
JAS規格によれば、
「1.2mm以上の太さの棒状又は2.5mm未満の太さの管状に成形したもの」と定義している。
ちなみに、本場イタリアでは、
直径1.6mm前後の細めのものをスパゲッティーニというそうで、JAS規格よりも厳密である。

昔は、昭和50年代頃までは、スパゲッティと言っていたのが、
いつの頃からかパスタとこじゃれて言うようになった。
「スパゲッティ」と言ったら「オヤジ!」と返されそうで、
スパゲッティはおじさんが使う古臭い言葉になってしまったような気がする。

しかし、若者よ。
スパゲッティの方がパスタより、より厳密に言葉を使い分けているのだよ。
君たちに、マカロニやペンネをパスタと言う勇気はあるか。

image002_20210802091641d53.jpg
これもパスタ。でも、スパゲッティではありません。

ミートソースとナポリタン

このようなことから、スパゲッティとパスタには、それぞれ別のイメージが構築されてしまった。
たとえば、冒頭に述べたカルボナーラやペスカトーレやボンゴレはパスタである。
ではスパゲッティはというと、これはもう2種類しかない。
すなわち、ミートソースとナポリタンである。

早い話が、昭和の喫茶店のメニューである。
ミートソースは、本来はポロネーゼといいボローニャ地方発祥の料理なのでこの名がある。
では、ナポリタンはナポリ発祥かというと全くそういうことはなく、ナポリタンは日本発祥で、
別の言い方をすれば、元祖・洋風の和風スパゲッティである。
早い話が、ケチャップ味の洋風焼きそばなのである。
多分、小生が思うに、イタリア風の食べ物ということで「ナポリタン」と命名したんじゃないかな。

しかし、懐かしいよね。
学生の頃は学食で、大学近くの喫茶店で、よく食べた。
まさに、「君とよくこの店に来たものさ」のガロの「学生街の喫茶店」だ(わかんねーだろーなー)。
余談だが、その頃、
スパゲッティ専門店で初めて食べた茹で上げスパゲッティとトマトソースの旨さにぶっ飛んだ。
喫茶店のスパゲッティは、茹で置きしたものを炒めて作るものであり、また、
トマトケチャップとトマトソースは全く別の物だということを初めて思い知ったのだ。

そもそも、小生が子どもの頃は、
スパゲッティといえば1食分の蒸した柔らかい生麺に粉末のトマトソースがついていて、
麺をハムや野菜と炒めて食べた。
先にも申し上げたほとんど「ケチャップ味の洋風焼きそば」である。
当時は給食にも袋入りの生麺のスパゲッティがあった。

今から思えば信じられないが、スパゲッティを作る時、「茹でる」という作業はなかった。
ふにゃふにゃの柔らかい麺だったけど、子どもはみんな大好きなメニューだった。
それだけに、学生になって、
渋谷の「壁の穴」とかのスパゲッティ専門店で茹で上げスパゲッティを食べた時は衝撃だった。
アルデンテという言葉とともに、
子どもの頃食べたスパゲッティとは全く異なる食べ物であることを知ったのだ。

スパゲッティの正しい食べ方

スパゲッティといえば2種類しかない時代だから、
スパゲッティのちゃんとした食べ方など誰も知らない。
最初の頃は、フォークに巻きつけて食べるのだとしたり顔で解説するやつがいて、
みんな適当にフォークをくるくる回して食べていた(今でもそうかもしれない)。

適当に回すと、巻きつく量は増えるばかりである。
ソバ感覚で、巻けない分をフォークから長く垂らし、
そのまま口へ持っていって、口から垂らして食べていた。

そこに現れたのが伊丹十三だ。
伊丹十三は昭和30年代にヨーロッパに滞在していたが、
昭和40年にヨーロッパでの見聞をエッセイ「ヨーロッパ退屈日記」として出版した。
小生がこれを読んだのはずいぶん後になってからだが、
彼のセンスで醸成された興味ある話が満載である。

で、その中でも最も興味を引かれたのが、「スパゲッティの正しい食べ方」という話である。
その中で彼が紹介しているスパゲッティの正しい食べ方は、
 ①スパゲッティを巻く専用の場所として皿の一隅に小さなスペースを作る
 ②その場所でフォークの先を軽く皿に押しつけてスパゲッティを巻く というものである。
②は、口に入るぐらいの適量を最後まで巻くということであり、
この、巻く場所を作り適量を巻くという作法を知る人はほとんどいなかった。

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伊丹十三の「ヨーロッパ退屈日記」(新潮文庫)。
山口瞳が絶賛したこれぞエッセイ。あらゆるものにあふれ出る才能。
自殺に見せかけられた彼の突然の死はほんとに悔しい。

さらに言うと、
西洋料理では、食べ物が口の外にはみ出しているような食べ方はルール違反である。
フォークで抑え、ナイフで切って、口に入る大きさにして食すのである。
つまり、ラーメンや蕎麦など、
口の外にもはみ出した麺を咥えてすするなどと言う行為はご法度なのである。

なので、スパゲッティも口に入るだけの量を一口ずつ食べるのである。
長いものを噛み切るのではない。
先のエッセイが出た昭和40年頃は、スパゲッティは茹で置きした麺で例の2種類しかない時代だ。
どれだけの人が彼の言うことを理解したのだろうか。

今でもインスタグラムなどのスパゲッティの写真では、
麺を少し巻きつけたフォークを持ち上げて、
フォークから皿まで麺が垂れ下がっているようなものをよく見かけるが、
あれはスパゲッティの食べ方を理解していないことを自らアピールしているようなものである。

巻くために大きめのスプーンが添えられるようになったのは、日本ではずいぶん後のことであるが、
これは①の巻く専用場所の代替であり、粋ではないと伊丹十三も言っている。
いかにもパスタ通のようにスプーンを使って巻いているのを見ると、
そんなのカッコよくないんだよ。
ほんとはね、ちょっと違うんだよ。
お皿の隅で巻く技術を身につけようね。
と心の中でつぶやくイヤミなおじさんなのである。

スパゲッティの正しい湯切りのし方

ところで、スパゲッティというと、この映画のことをどうしても語らなければならない。
それは、「アパートの鍵貸します」だ。
今となっては古い部類に入るアメリカのロマンチックコメディーだ。

主演のジャック・レモンがスパゲティを食べようとして茹でるのだが、
ザル(英語では何て言うんだろう?調理用の物でも”basket”でいいんだろうか?)
がないことに気づき、テニスのラケットで湯切りをするコミカルなシーンがある。

テニスのラケットじゃあ目が粗すぎないか?湯切りに使うのならバトミントンのラケットでしょう。
などと思いながら見ていたのだが、
ラケットにスパゲッティが1本残るなど、意味深な仕掛けなどもあり、
普通の小道具を思わせぶりに使う監督のビリー・ワイルダーの粋な映画づくりと、
ヒロインのシャーリー・マクレーンのかわいい美しさにほだされる映画だ。
シャーリー・マクレーンは、ヘップバーン系の日本人好みの、そして小生好みのかわいい美しさだ。

このラケット湯切りのシーンが明石家さんまがお気に入りで、
テレビドラマ「男女7人夏物語」でパクったそうだ。
余談だが、「男女7人夏物語」は明石家さんまと大竹しのぶが共演し、
結婚するきっかけになったドラマだ。

しかし、この2人の掛け合いは今でも面白いなあ。
大竹しのぶは抜群の演技力を持った女優だと小生は思っているのだが、
さんまと一緒にいるとどうしてあんなに抜けた面白いキャラになるんだろう。

それはさておき、ジャック・レモンが湯切りするのは、
まちがいなくスパゲティであってパスタではない。
パスタなどというものは、あの頃にはない。

それは、ミートソースやナポリタンはスパゲティでしかありえなく、
断じてパスタなどではないのと同義であるのだ。

| コラム | 09:33 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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