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おかずでご飯を包んでもいいじゃないか(2020.9)

関東にあって関西にないもの

「生協ではなかなかないんだけど、今週はあったから、あんこ玉を注文したの」
「冷凍してあるから」と嬉しそうに妻が言う。
あんこ玉は、金づばと並んで妻の大好物である。

あんこ玉は、知る人ぞ知る(知らない人は知らない)東京は舟和の和菓子である。
上品なこしあんが直径3センチほどの団子に丸められて寒天で薄く包まれた和菓子だ。
美味しいけど高い。
一番の弱点は日持ちがしない事で(間違いなくそれがまた有難味を増す要因である)、
わが家では冷凍庫に直行となり、都度解凍してちびちび味わって食べる。

決して甘党ではない小生も、あんこ玉は美味しいと思う。
何より味と佇まいが控えめで上品だ。
なめらかな豆の味がする。
関東の和菓子の銘品だと思う。関西ではこの手の和菓子は見た事がない。

関東の和菓子といえば、「すあま」をご存知だろうか。
広島では、関西では、「すあま」と言っても普通はまず通じない。
小生は学生時代に関東に行くまで、見たことも聞いたこともなかった。
多分、関西に住む人は、一生、見ることも聞くことも、食べることもない人が多いのではないかと思う。

「すあま」は、見た目はほとんどピンク色のカマボコだ。
くっつく感じの柔らかさがあり、味は控えめな甘さだ。
食感と味は「ういろう」が最も近い。
昔は関西には全くと言っていいほどなかった納豆がこんなに一般的な食べ物になっているのに、
なんで「すあま」は関西で広がらないのだろう。

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これが「すあま」。見た目はほとんどカマボコだが、全然違うものだ。ピンクが多いが、緑色などのものもある。

そういえば、お菓子ではないが、「ちくわぶ」も同じだ。
「ちくわぶ」は、小麦粉を練って太いちくわの形に成形したもので、
「竹輪『麩』」とあるが、麩ではなく、「そばがき」に近いものだ。
おでんに入れ、味が染み込んだもちもちした食感を楽しむものだ。

この「ちくわぶ」も関東出身で練りもの好きの妻の好物なのだが、
(厳密には「ちくわぶ」は練りものではない)
以前は広島では売っていなかった。
最近は一部のスーパーで見かけるようになったが、まだこちらでは一般的な食材ではない。

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これが「ちくわぶ」。ちくわとは似て非なるもの。小麦粉のかたまりだ。

ねりものはくせもの

練りものというものは要注意である。
練りものは千変万化である。
例えば、広島なら「がんす」である。

「がんす」は野菜を混ぜたすり身を長方形に成形し、パン粉をつけて揚げたものである。
早い話が、パン粉がついた揚げカマボコ(平天)である。
唐辛子を入れた島根は浜田の赤天、じゃこを骨や皮ごとすりつぶした愛媛は宇和島のじゃこ天も、
同様の揚げカマボコの系統に属する。

カマボコと竹輪は整形のし方が違うだけで、ほとんど同じものである。
すり身を板に盛り上げて加熱すればカマボコ、すり身を竹に巻き付けて加熱すれば竹輪となる。
すり身に豆腐を加えた揚げカマボコが日南の飫肥天で、
すり身に豆腐を加えた竹輪が鳥取の「とうふちくわ」である。

カマボコのバリエーションの筆頭は「削りカマボコ」だろう。
「削りカマボコ」は、カマボコを日持ちさせるために乾燥させて削ったもので、
愛媛の南予が発祥らしいが、小生は山口の宇部で初めて見た。
削り節のようにトッピングして使うのが一般的だ。

しかし、カマボコの最強のバリエーションは、
沖縄の「バクダンおにぎり」にとどめを刺すのではないだろうか。
一般に言われる「バクダンおにぎり」というものは、シャケやオカカなどの定番ネタを入れたものではなく、
おかずの残りや何やかや、いろんなものを入れた大きな海苔巻きおにぎりのことを言うが、
沖縄のそれは、全く違うものである。

小生はこれを沖縄で初めて見た時いったい何かわからず、説明してもらってぶっ飛んだ。
ウチナンチューの何でも採り入れて新しいものを生み出すチャンプルーな発想と能力
(タコライスにしかり、ポークたまごにしかり)にただただぶっ飛んだ。

「バクダンおにぎり」は、ジューシー(炊き込みご飯)をすり身で包んで揚げたものだ。
見た目は色の薄い大ぶりなさつま揚げの丸い玉なのだが、なんと!中には御飯が詰まっているのだ。
肉巻きおにぎりは知っているが、よりによってご飯をカマボコで包むという発想がすごい。
考えてみてほしい。カマボコの中にご飯が詰まってるんだよ。

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これが「バクダンおにぎり」。初めて見た時、えらい大きい練り製品だと思ったが、まさか中にご飯が入っているとは。

バクダンおにぎりはなぜすごいか

そこで、なぜ沖縄の「バクダンおにぎり」が特異なのか考えてみた。
ポイントは以下の2点、すなわち、①練りもので包んでいること ②ご飯を包んでいること の2点だ。

まず、①について考えてみた。すり身に色々なものを混ぜ込んだ食品はたくさんあるが、
練りもので包んだ食品というものは、
細長く切ったゴボウを芯にしたゴボウ天やウズラの卵を芯にした玉子天などのおでんネタに限られる。

饅頭などのお菓子を除いても、洋の東西を問わず、「包む」食品はたくさんある。
日本なら「おやき」、中国なら餃子や包子や焼餅、欧米ならピロシキなどである。
しかし、これらの食品は、小麦粉を主材料とするでんぷん質の皮で包んでいて、
練りものなどのたんぱく質で包んだものではない。

たんぱく質で包むためには、たんぱく質をシート状にしなくてはならない。
変形自在なシート状にできるたんぱく質というものは、薄揚げや湯葉などの植物性たんぱく質以外のもの、
すなわち、動物性たんぱく質では卵を除いては難しいのである。
しかし、練り製品はそれを可能にした。
そして、たんぱく質は、別の言い方をすれば「おかず」なのである。

次に、②であるが、先に述べた「包む」食品の中身(餡)はすべて肉や野菜などの「おかず」である。
おむすびやいなりずし以外に主食であるご飯を包んだ食品は、
「いかめし」やサムゲタン以外には思い浮かばない。
しかし、「いかめし」やサムゲタンは、全体として完結したひとつの料理だ。
生米を素材に詰めて煮て、素材の味を米にしみこませながら炊くという料理法であって、
炊いた米を包むという二次加工を施すものではない。

「包む」食品は、普通、でんぷんでたんぱく質を、すなわち、主食でおかずを包んでいる。
「バクダンおにぎり」のすごいところは、
「おかずでご飯を包む」という逆転の発想を実現していることなのだ。
結果としてそういうことになっているが、順を追って考えると、これは実にすごいことなのだ。

冬に食べるアイスクリームがあってもいいじゃないか。
切れなくなっても新しい刃がすぐ出てくるナイフがあってもいいじゃないか。
逆転の発想がないと、雪見大福もカッターナイフも生まれなかった。

もう一度頭の中をリセットして白紙で考えてみよう。
どこに穴があるか常識というやつを疑ってみよう。
ひらめくこともあるけど、たぶんそれは稀なことだ。
十分考える事が必要だ。

そして、みんなに言おう。
「○○な○○があってもいいじゃないか」

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