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頭から足が生えいたっていいじゃないか(2020.3)

「おなか」はどうして「なか」じゃないんだろう

先月は「ものの名前」と題してあれこれ書いたが、
ものの名前というと、昔から、そう、子どもの頃から腑に落ちないことがある。
それは、身体の名前だ。

身体の名前はよく「お」をつけてよばれる。
すなわち、おめめ、お鼻、お口、おてて、おなか、おへそ、お尻、お膝などなどである。
ここからもう既にいろんな不思議が始まる。

まず、「お」がつかないものはどうしてつかないのか。
「お」をつけるのは幼児語や丁寧語が多いが、
それにしても「おつむ」とは言うが、「おあたま」とは言わない。
「ほっぺ」とは言うが、「おほほ」とは言わない。(笑っているわけではない!)
脇とか踵(かかと)などは「お」をつけたものは聞いた事がない。
ちなみに、「おめめ」や「おてて」のように言葉がダブルのは、「め」や「て」が一文字だからだろう。

しかし、最も不思議なのは「おなか」である。
「お」は丁寧を表す接頭語なので、「おへそ」から「お」を取っても「へそ」で通じる。
しかし、「おなか」はどうだ。
「おなか」から「お」を取ったら、全く通じないではないか。「なか」とよばれる体の部位はない。
「おなか」を漢字で書けば「お腹」となるが、「腹」には「なか」という読みはない。
「おなか」は身体の真ん中…すなわち「なか」…
なのでできた言葉だろうけど、それにしても「おなか」だけは不思議である。

「おなか」から生えるもの

われわれの体は、「おなか」…すなわち胴体から手足や頭が生えている。
動物というものは、哺乳類はもとより、
鳥であれカエルやトカゲであれ(もっとも蛇には足はないが)虫であれ、みんなそうである。
それが常識というものだ。

しかしだ、神の造形は当然ながら人知を超えている。
生きものの中には、頭から足が生えているものがあるのである。
しかも、頭の足の付け根に口があるのである。
なんと不気味な。

頭から足が生えているのなら、「おなか」はどこにあるのだろうか。
足は体の先端にないと歩けないから、「おなか」は多分、足とは反対側で頭につながっているのだろう。
すなわち、足→頭→「おなか」という形だ。
「おなか」が体の一番上(下)にあって、
「おなか」の下(上)の頭の口のまわりから生えた足で歩いたりする姿が想像できるだろうか。
まさに「へんないきもの」の極致だ。

image002_202003021008560c4.png
「おなか」の下(上)の頭から生えた足で歩いたりする「へんないきもの」。
なんと不気味な。

しかし、このような生き物が僕たちの身近にごく普通にいるのである。
みなさんもよく食べているあれだ。
これらの生きものは、頭から足が生えているので「頭足類」とよばれる。
そう、イカやタコの仲間だ。オウムガイやアンモナイトもそうだ。

ところで図鑑などの写真や絵、料理の盛り付けでは、
一般的に頭のある方を左(もしくは上)にする決まりだ。
従って、頭足類では、足のある方が頭なので足を左(もしくは上)、胴を右(もしくは下)になる。
この決まりでいくと、
縦長の図幅もしくは盛り付けでは逆立ちした形になり、普通のイメージとは逆になる。
頭足類って、やっぱりへんなんだ。

頭足類は大きくは貝の仲間である。
イカやタコの頭足類に対して、いわゆる貝類は腹足類という。
「おなか」に足がつながっているのだ。
われわれ人間と一緒だ。
こっちの方が生物の体の構造としては理解しやすい。

腹足類の足は、体と一体となった形状不定のべたーっとしたものだが、
頭足類の足は何本にも分かれた顕著な足で、自由に動かせ獲物を捕らえる能力のある足である。
同じ貝なのに、どうしてこんなに変わっちゃったのか。

変わっちゃったといえば、イカがへんなのはもう一つあって、それはイカの数え方だ。
イカは、泳いでいる時は「匹」と数えるが、陸に上がると「杯」、干したものは「枚」と数える。
「匹」はさておき、「杯」はその円錐形の形から、
「枚」はぺしゃんこの平たいものだからそう数えるのだろう。
ちなみに、タコやカニも泳いでいる時は「匹」、陸に上がると「杯」と数える。
「枚」がないのは基本的に干したものがないからだろう(瀬戸内海には干しダコがある)。

じゃあ、英語では生きものの数はどう数えるのだろうと調べてみると、
たとえば two dogs(犬2匹)のように、基本的に「数+名詞」のようだ。
日本語では、動物の数詞でも匹をはじめ頭、羽、尾などいくつかあるし、
同じ生きものでも状態によって数詞が変わる。

日本文化の繊細さがこういうところにも表れる。
しかし、生体、死体、加工物といった体の状態で数詞が変わるなんて、こんな生きものが他にあるだろうか。

イカが支配する未来

イカやタコはとんでもない生き物である。
足だけではない。特筆すべきは目である。
その目は、われわれと同じようにレンズや絞りをもつカメラ眼とよばれる目である。
とても軟体動物とは思えない。
想像してほしい。われわれと同じような目を持つアサリやナメクジを。…不気味だ。

体のパーツだけではない。イカやタコはとても知能が高いと言われている
2010年のW杯南アフリカ大会で、
ドイツ代表の8試合の勝敗を全て的中させたタコのパウル君を覚えておられるだろうか。
パウル君の予想方法は、
餌と対戦国の国旗が入った水槽の中のプラスチック製の2つの容器のどちらかに入るというものだが、
偶然にしては確率が高すぎ、なぜそれが勝敗的中につながるのか全く分からないが、不思議である。

以前、NHKの番組で「オドロキ!これが未来の生き物だ」という放送があった。
これは「フューチャー・イズ・ワイルド」というイギリスの番組をもとにしており、
人類や現在の生物が絶滅した後、どのような動物が登場するかを想像してCGにより映像化したものだ。
放送後、DVDや関連書籍が販売された。

2億年後の世界の森林地帯では、テラスクイドというゾウのような生物が闊歩している。
このテラスクイドは、外とう膜の内側の空洞が肺になったイカが地上に進出して進化した生きものなのだ。
テラスクイドのうち最も大きな種のメガスクイドは、声帯をもち大きな鳴き声も出すという。
僕はこの番組を見て、大いに共感した。
イカならあり得る。
イカなら人類の次に世界を席巻する能力があると思う。

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フューチャー・イズ・ワイルド完全図解―The WILD WORLD of the FUTURE.(表紙)クレアー パイ 著 疋田努 監修.ダイアモンド社
左下の生物がメガスクイド。


君たちはどう生きるか

「イカサマ」という言葉がある。
釣りというものは餌をつけて釣るのものだが、
イカの場合は餌を使わず、餌木という餌に見せかけたルアーを使って釣る。
餌いらずで釣れるイカは、釣る方からいえば大変ありがたくイカ様々なので、
バクチなどで騙す行為をイカサマいうのだ。

人類滅亡後(サードインパクトか。エヴァンゲリオン!)、
地上の帝王になるイカに対し、愚かな人間が見下したあまりにも失礼な言葉だ、と思いませんか。

イカサマは「如何様」である。
いかように、どのように、僕は、貴方は生きるか…
「君たちはどう生きるか」は、雑誌「世界」の編集長も務めた吉野源三郎の小説である。
2年前に漫画版が出て大きな反響を呼んだ。

「君たちはどう生きるか」は、いじめや裏切りなど主人公の中学生のコペル君が、
日常生活で遭遇する様々な出来事とそれに対する叔父さんの考え方を記したノートのやりとりの物語である。

 「あたりまえのことというのが曲者なんだよ。
 わかり切ったことのように考え、それで通っていることを、どこまでも追っかけて考えてゆくと、
 もうわかり切ったことだなんて、言っていられないようなことにぶつかるんだね。」


ものの見方についての叔父さんからのノートの一節である。
コペルニクス的転回。
鼻は顔の真中でちょっと盛り上がっていることはあたりまえだ。
足は胴から生えているのはあたりまえのことだ。

でも、そうかな。
鼻が手のように長く伸びて物をつかむ生きものがいたっていいじゃないか。
頭から足が生えている生きものがいたっていいじゃないか。

固定観念に縛られたひとつの見方だけでは、たくさんのことを見失ってしまう。

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