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快適な環境-その広くて大切なもの(2020.01)

宙ぶらりんの「快適環境」

とある自治体の環境基本計画の策定に携わった。
環境基本計画では、その対象として5つの環境分野を設定するのが一般的だ。
5つの環境分野とはすなわち、生活環境、自然環境、快適環境、地球環境、
そしてそのすべてに関わってくる環境保全活動の5つである。

ところがその自治体は、「快適環境」とはいかなるものか分かりづらいとして、
それを生活環境に組込み、4つの環境分野とした。

快適環境は、緑や水辺とのふれあい、景観、環境美化、歴史・文化的環境などを言い、
公害や廃棄物、生きものなどの「環境」らしい環境と異なり、
環境の要素が様々なものとクロスオーバーした特定の分野に入りきらない部分である。

快適環境は、純然たるいわゆる「環境」の分野ではないうえ、
境界が曖昧でそのすそ野はどんどん広がり続けている。

行政の所管業務

特に、所管が明確で縦割りになっている役所では、
快適環境は他部門のテリトリーとクロスオーバーしている部分が多いため、
具体的な行政の取り組み≒事業を明らかにする段になると、いろいろと波風が立ち、
結果、当り障りのない表面的な計画になってしまうことが少なくない。

例えば、河川の水質は環境分野の大きな項目であるが、
多くの自治体ではその改善を左右しているのは下水道を中心とした排水処理施設整備である。
そして、下水道は国交省管轄であり、
役所では環境部門ではなく建設部門(下水道課)が担っている。
下水道課からいえば、
自分たちの事業に対して何で関係のない環境部門が口出しするのかという事になる。

一方で、仕事で色々な役所の人と話をしていると、環境部門の人の愚痴をよく聞く。
「何でそれをうちでやらなきゃいけないの?」典型的なものは、エネルギー施策である。

エネルギー施策は、国では経済産業省が所管だが、多くの自治体では所管する部署はない。
しかしそれは、仕方のないことなのである。電力行政は元々国の施策だったからである。

しかし、ここにきて、エネルギー施策≒地球温暖化対策なのである。
そして、地球温暖化対策は環境省の所管である。
さらに、農水省はバイオマス、国交省は低炭素というように、
視点や形は違えど目指すところは一緒のCO2削減の事業が各省庁に広がっているのである。

CO2削減という看板や役所の縦割り体制の中で、
自治体の中で行き場を失ったこれらの事業は環境部門に流れ込んできて、
環境部門の人は「何でもやる課」化せざるを得なくなっている。
そして先のような愚痴となって出てくるのである。

組織を担当する内容で役割を決めることは当然のことである。
しかし、近年は時代のスピードが相当速い。
従前のような縦割りでは組織がうまく回らなくなってきている。
緩い縦割りにして、所管に縛られずに自由に動ける人間をつくることなど、
組織改革が必要なのではないだろうか。

環境の「質」からの発想

一般社会においても、近年では、
企業経営で環境・社会・経済に配慮を求めることを意味する「トリプルボトムライン」や
「ESG」という言葉に代表されるように、
環境は社会・経済と密接につながりを持つことが認識されはじめている。

さらに、このコラムでも何度かとりあげているSDGsでは、そのすそ野はより広く拡大している。
SDGsでは、景観や緑化、歴史や文化どころか、
貧困や飢餓、平和や公正なども目標とし上げれられているのである。

「快適環境」は、環境の「質」についての概念であり、
そういう意味からは、実は、最も重要な環境の分野ではないかと小生は思うのである。

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「快適環境」は、SDGsでは直接的にはこの3つの目標に関連してくるんじゃないかな。
もちろん、17の目標すべてに関連してくるものだけど。

「アメニティ」の歴史

今を去る40年以上前、ランドスケープを学んでいた学生の時に、
助教授が突然「アメニティ」という言葉を研究室に持ち込んできた。
「快適性」と訳されるこの概念は重要なので、これから日本に定着させなければならないと。
君たちもこの言葉について一緒に考えろと。

快適-気持ちがいいということ-がなぜそんなに重要で、ことさら言い立てるのか分からない。
当時、僕たちは初めて聞くアメニティという言葉を、
「アメネテ」などとちゃかした言い方をしたりして、研究室で一時流行語になっていたほどだ。

アメニティ(amenity)は、ラテン語の「愛」(amare)に語源を持つイギリスの言葉であるが、
その当のイギリスにおいても、定義づけは難しいと言われているそうである。
研究社の新英和中辞典では、
「(場所・気候などの)ここちよさ・快適さ、(人柄などの)好もしさ・感じよさ」とある。

しかし、環境庁は昭和59年に「快適環境整備事業(アメニティタウン計画策定事業)」、
昭和62年に「アメニティマスタープラン策定事業」を開始した。

コンサルに就職した小生は、早速その委託業務の受注に苦慮することになる。
学生の時、もっと突っ込んでアメニティを学び、
関係する学・官の人たちとの人間関係を作っておけばよかった。
今から思えば、このような事業の制度設計を前に、助教授はそのベースとなる概念を検討し、
整理しておきたかったのだろう。

我が国では、昭和51年、OECDの東京レビューにおいて、
公害対策の成果が高く評価された一方、
環境の質(アメニティ)の低さを指摘されたことから、アメニティという言葉が認識され始めた。

アメニティという文言が直接入るのは環境庁の事業だが、
建設省の「都市景観形成モデル事業」や「手づくり郷土賞」は、
アメニティという概念の導入とともに始まった事業で、
特に、景観関係の事業の源流はここにあると言っても過言ではない。

また、河川の「河川環境整備事業」、道路の「シンボルロード整備事業」など、
多くの分野で関連事業が生まれた。
特に河川においては、従来の治水・利水に加え、水辺とのふれあいの重要性が再認識され、
「親水」という言葉が以後広く使われるようになった。

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「アメニティ」はまちづくりの重要なキーワードだった。環境の側面からの都市計画では不可欠の概念だった。
(資料:ふるさと・アメニティ・まちづくり.アメニティ・タウン研究会、日本環境協会他.ぎょうせい.1989)

「アメニティ」の変貌

あの頃から30数年、今ではアメニティとは、
歯ブラシや綿棒などのホテルの衛生備品だと思っている人が多い。
「アメニティ」をネットでググれば、
業務用アメニティと称してシャンプーやリンス、ボディーソープなどが出てくる。
アメニティグッズなどといったい誰が名付けたんだろう。
そりゃあ快適さをウリにするものには違いないけど。

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これが「アメニティ」だなんて・・・

「愛」(amare)の語源に立ち返り、誰にとってもfeeling groovyな環境とはなどと、
あの頃のアメニティの理念についての熱い議論を知っている者としては、
その落差の大きさに苦笑するしかない。

冒頭で述べたように、快適環境が意味するものは一般市民にはなかなかその像を結ばない。
ともあれ、「快適」とは環境の質のことであり、
「快適環境」という分野がいかに広く、重要な分野であるか、
それはこれまでご紹介してきたとおりである。

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