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ゆかいなことを いっそうゆかいに(2019.3)

井上ひさしが教えてくれた

年度末がやってきた。
仕事に追い立てられながらも今年度の仕事をふりかえってみる。
やはり、やった感があるのは小中学校に行って出前授業を行う「再生可能エネルギー教室」だ。
早いもので、今年度でもう9年目になる。

今年は新しい展開があった。
小学校の放課後児童クラブでの教室が今年度から始まったのだ。
この話があった時に、これは困ったことになったと思った。
小学校の放課後児童クラブというのは、基本的に小学1~3年生なのである。

研修やワークショップなどの講演者やファシリテーターというものは、
場数を踏み、慣れてしまえばそんなに難しいものではない。
慣れてしまうと逆に、
今日はどんなジョークで笑いを取ろうかなどとつまらない下心さえ芽生えてくる。
それは大人が対象だからだ。
ところが、相手が子ども、それも小学校低学年になると途端に難しくなる。

人前で話すのが好きで、自分は専門知識が豊富だと思っている人ほど面白くない話になる。
以前、某大学教授が
小学校の出前授業で悲惨な状況になったのを目の当たりにしたことがある。
講演やファシリテートは年齢が下がるほど難しくなるのである。
子どもの気持ちになり、子どもの目線で話し、子どもと一緒に盛り上がっていく必要があるのだ。
さあ、どうするか。
そこで思い出したのが、井上ひさしの名言である。
すなわち、

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、
ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、
まじめなことをゆかいに、ゆかいなことをいっそうゆかいに」

さすが井上ひさしだ。
何というすごいコピーだ。
こんなことを考えて言葉に―それもリズムにのって展開していく言葉に―することができるなんて。
最後の「ゆかいなことをいっそうゆかいに」では唯一「いっそう」という副詞がついている。
このことによって、楽曲がトニックで終結するように、すっとおさめているとこなんか、ニクイ。

「むずかしいことをやさしく~」は、実際にやろうとすると、どれもこれも難しい。
そして、実際にやるためには、実は、多くの知識と、センスと、
そして何より「おもしろがる心」が必要だと思うのだ。
たとえば、「再生可能エネルギー教室」で考えてみる。

むずかしいことをやさしく

発電の原理は、電磁誘導である。
電磁誘導の原理は、磁界が変化するとコイルに電気が流れるというものだが、
小学生には難しい。
なぜ難しいか。
一番の原因は、磁界も電流も見えないからだ。
しかも、磁界だの電流だの言葉が難しい。
先生の話を聞いても何も分からない。
見えないものや触れないものは、イメージや概念を形成することができない。

ここに巣を守っている見張役の魚と侵入者の魚がいるとする。
侵入者が近づいて来たら見張役は侵入者に反発し、追い払おうとする(A)。
ところで、魚にはNとSの性質があり、NとN、SとS同士は反発し、NとSは吸着するとする。

Aの場合、
見張役は侵入者を追い払うために侵入者と同じ性質(N)になって反発しようとする。
侵入者は磁石で、見張役はただの電線(コイル)である。
しかし、電線は追い払うためにNになる(磁界をつくる)のである。
この時、だだの電線が電磁石になるのである。
そして、磁界をつくり出すために、SからNに電気が流れるのである。

では、Bはどうか。
侵入者は相手が強いとみて遠ざかる。
相手が弱いとみた見張役は、
今度は逆に侵入者を引き込むために異なる性質(S)になって吸着しようとする。
この時、上記と同様に、SからNに電気が流れるのである。

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やさしいことをふかく

電線(コイル)の中で磁石を動かせば(回せば)、コイルに電気が起こる。
発電とは、要は何かの力で磁石を取り付けた軸を回せばいいのだ。
ここまでくれば、小学生でも具体的にイメージできる「やさしいこと」になる。
水の力で回る水車。風の力で回る風車。
それが再生可能エネルギーだ。
太陽光はちょっと難しいけどね。

ところで、川の水はどうして流れるんだろう?川の水はどこから来たんだろう?
この問いは、小学生でも答えることが可能だ。
川の水が流れるのは雨が降ったから。
じゃあ、雨はどこから来るんだろう?
雲から来る。
じゃあ、雲はどうしてできるんだろう?
海の水が太陽で温められてできる。
じゃあ、風はどうして吹くんだろう?
(太陽で海の水が温められて)雲ができたり、太陽での温まり方が陸と海では違うから風が吹く。

じゃあ、石油や石炭のエネルギーはどこから来たんだろう?
石油や石炭は昔の植物などの生きものだ。
昔の植物はどうやって大きくなったんだろう?
太陽の力で光合成をして大きくなった。

そう、太陽光発電はもとより、水力発電も風力発電も火力発電も、
エネルギーの元をたどっていけば、みんな太陽にいきつく。
この地球にいる限り、すべてのエネルギーの源は太陽なんだ。
これは、子どもたちに気づいてほしい自然の大きな大きなしくみなのだ。
そしてそれは、深い深いことなのだ。

image004_20190308163759c92.png

ふかいことをおもしろく

再生可能エネルギーがいいって言うけど、ほんとにそうかな。
だって、夜は太陽は出ないじゃないか。
一日の半分は太陽光発電はできないっていうことだ。
残念!

ところで、何で昼と夜があるんだろう。
・・・そう、地球は回っているからだ。
一日かけて自分で回っているから、昼と夜があるんだ。

まてよ、でも太陽はいつもある。
いつも太陽が照っている場所に行けば、ずっと太陽光発電ができるんじゃないか?
じゃあ、いつも太陽が照っている場所―昼と夜がない場所―はどこにあるんだろう?
昼と夜ができるのは地球が回っているからなら、
地球の外に行けば、昼と夜がない場所、
すなわちいつも太陽が照っている場所があるんじゃないか。
地球の外に出ればいいんだ。

地球の外で太陽光発電―宇宙太陽光発電。
既にJAXAやNASAが研究を初めてるんだよ。
地球の外で発電するなんて、宇宙で発電するなんて、面白いじゃないか。
ワクワクするねえ。

おもしろいことをまじめに

しかし、ちょっと考えてみよう。
宇宙太陽光発電って、メガソーラーだろうな。
多分相当コストがかかるだろうから、大規模なものになるだろうな。
どのくらい太陽光パネルがいるんだろう。
相当な枚数だろうな。

ちょっと待てよ、宇宙に運んでいかなきゃいけないんだろ。
多分ロケットで打ち上げるんだろうけど、そんなに太陽光パネルが積めるのかな。
ロケットってほとんどが燃料タンクで、貨物を載せるスペースってすごく狭いんだろう。

また、仮にそれなりに積めたとして、
宇宙空間でどうやって太陽光パネルを広げるのかな。
話によれば、宇宙太陽光パネルは、1辺が数kmあるそうだ。
まさか宇宙飛行士が何キロも宇宙遊泳して作業するわけじゃないだろう・・・

と、ことほど左様に「おもしろいことをまじめに」考えれば、次から次へと壁にぶつかっていく。
ひとつの新しい技術の背後には、たくさんの関連技術がある。
それらを一つひとつ解決していかなければ新しい技術は生まれない。
そのはるかな道のりにくじけそうになる。
やっとられんぜ。

まじめなことをゆかいに そして・・・

そこで求められるのが、「あそび心」だ。
山高く、道険しければ、まじめに考えるとやっとられんが、
ゆかいに考えるとやる気も出てくる。
「あそび心」とは、「おもしろがる心」だ。

突然だが、僕は、赤塚不二夫を昔からとても尊敬している。
実は赤塚不二夫こそバカボンのパパなのだ。
なぜバカボンのパパがすばらしいか、なぜ赤塚不二夫がすばらしいかというと、
それは、いつも「おもしろがる心」を持っているからだ。
そしてそれは、とてもピュア―な心だ。

実は、そのものズバリ「井上ひさし×赤塚不二夫の笑劇場」という本があるのだ。
その昔「オール読物」に連載されていた幻の名作が単行本となって数年前に出た。
井上ひさしが書いたコントに赤塚不二夫がマンガを描いたという、
もうそれだけでハチャメチャなトンデモ本であることは想像に難くない。

落ち着くところは、そう、「ゆかいなことをいっそうゆかいに」

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河出書房新社より2015年に発行

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