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金沢味紀行~食物多様性へのいざない(2018.6)

いざ金沢へ

ちょうど1年前、去年の6月に金沢に行った。
仕事で行ったのだが、休日をからませて雨の中、金沢を歩き回った。
金沢は、大学時代に友人がいて、
彼の実家に1週間ほどお世話になってあちこち行ったが、
どこへ行ったかもうほとんど覚えていない。

加賀百万石。
江戸の文化が花開いた金沢は、
大工でも茶をたて、謡曲を口ずさみながら仕事をするというほど
庶民の間でも様々な文化が浸透している土地柄だ。
なので、行く前から心ときめかせていた。

ふるさとは遠きにありて思ふもの。
兼六園や金沢城などの史跡や多くの博物館や美術館はもちろんだが、
金沢の魅力は、例によって・・・食べ物である。
今回は、金沢の食べ歩きにおつきあいください。

真実の海鮮丼

金沢で「食べる」といった時に、
まずどうしても欠かせないのが「近江町市場」である。
近江町市場は金沢駅の近くにあって、金沢の重要な観光名所のひとつであるが、
金沢市民から「おみちょ」と呼ばれ市民の台所と言われている場所でもある。
昼飯が近江町市場で食べれるよう昼時に金沢駅に着くように設定し、
到着したその足で近江町市場に向かったのだ。

近江町市場で食べるものといったら、それはもう海鮮丼だ。
あらかじめガイドブックで下調べをして行ったが、これは迷うわ。
どの店の店頭のサンプルや写真も気合が入っている。
てんこ盛りのネタが丼から溢れんばかりにはみ出している。
かなりのお値段のものもあるが、
これはその値段分の価値があることは実物を見なくとも明白である。

市場の中を何度も行ったり来たりした挙句、「井ノ弥」という店に入った。
入ったら入ったで、また迷った。
メニューはどれも目移りして決まらない。
海鮮丼といったって、ベーシックなものだけで
「井ノ弥どん」「ちらし近江町」「上ちらし近江町」「ちらし近江町特盛」とある。
散々迷った挙句、税込2,000円の「ちらし近江町特盛」にした。

小生は、ラーメン屋でも何でも、作っているのが見える席があったらそこに座り、
料理の作業を観察するのが常だ。
幸いにもそんな席に座ることができたので、大将の作業を観察した。
そして、出てくるであろう食べ物の質が高いことを確信した。

大将はその都度、冷蔵庫から冊を取り出し、柳刃で刺身を切り出す。
ブリ、マグロ、サーモンなどなどひとつずつである。
スプーンで掬って盛り付けているカニのほぐし身やイクラは半端な量じゃない。

で、ついに出てきた。
感動である。
何がすごいって、のっている切り身の大きさと厚さがすごい。
一切れ食べるのに3口ぐらいかかる。
「刺身食べたー」という感じである。
見た目の彩は美しいが、
薄い刺身がちょこまかとのっている海鮮丼とははっきり一線を画する。
これぞ真実の海鮮丼。大満足である。

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「井ノ弥」の「ちらし近江町特盛」税込2,000円。ネタの大きさ、厚さは半端じゃない。

近江町市場で金沢を見た

海鮮丼に大満足した後、市場の中をさまよった。
沖縄は那覇の安里市場が典型だが、
地方の「〇〇市場」というところをあてもなく歩くのはとても楽しい。
それは、今まで見たこともないものに遭遇するからだ。
中でも海産物を売る店は要注意である。

九州の柳川で、初めてワラスボやウミタケ、イソギンチャクを見たときはほんと驚いた。
で、ありました。近江町市場にも。
ここの特色は、「その場で食べれる」ということを前面に押し出していることである。
生ウニ、ボタンエビ、ホタテなどが置いてある。
広島でいえば、殻付き生ガキをその場で食べさせるような感じだ。
日本人より外国人が群がっている。
冬になって、カニやブリやタラの白子が揚るようになったら、どういうことになるんだろう。
冬に来てみたいなあ。

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これはいけん。ちょっとお酒が飲みたくなる。

海産物の店は最初から期待していたのだが、想定外の発見は野菜である。
見たこともない野菜を売っている。
「打木赤皮甘栗かぼちゃ」「金時草」「加賀太きゅうり」などとある。
思わずわが家の土産に「加賀太きゅうり」を買い求めた。

店のおばちゃんに「どうやって食べるの?」と聞くと、煮てあんかけにして食べると言う。
中国料理に普通のキュウリを皮を剥いてクリーム煮にする料理があるが、
これはもう冬瓜の食べ方だ。
「金時草」は、まぎれもなく沖縄の島野菜のひとつ「ハンダマ」だ。
ハンダマは、今まで沖縄以外では見たことはなく、
なんで島野菜が遠く離れた金沢に「加賀野菜」としてあるんだろう。

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近江町市場の加賀野菜の店。見たことのない野菜ばっかり。

調べてみると、金沢市農産物ブランド協会が「加賀野菜」として15品目を認定しており、
前述の3種の野菜はいずれも認定種である。
これらはいわゆる「伝統野菜」と言われるものである。
伝統野菜は、栽培上の弱点があったり生産量が少なかったりすることが原因で、
栽培の拡大や流通網にのらなかったものだが、
その地域の風土に育まれ、長い時間かけて育てられた恵みである。

まさに、生物多様性でいうところの「4つの生態系サービス」のうちの一つである
「物質の供給サービス」そのものである。

わが広島にも「広島菜」や「観音ねぎ」だけでなく、
「矢賀ちしゃ」「小河原おくら」「広甘藍」(ひろかんらん)などの伝統野菜があるのをご存知だろうか。

そして、あれ

これらの加賀野菜や新鮮な海産物などの地元の食材を、金沢では「じわもん」という。
加賀百万石の文化は、当然、食文化も深化させた。
金沢の郷土料理といえば、鴨を加賀麩や加賀野菜と煮た「治部煮」や、
カブとブリを麹で漬け込んだ「かぶら寿司」などがあるが、
金沢で郷土料理店に行き、これらを食べるのは、あたりまえだがお金がかかる。
なので、ポケットマネーなら、当然B級グルメである。

で、小生が食べ物の話をするときに必須なのが、そう、あれ・・・カレーである。
金沢にはご当地カレーの「金沢カレー」があるのだ。
今回の金沢食べ歩きの一番の大きな目的は、
ご当地でこの「金沢カレー」を食べることなのだ。

金沢カレーは、ステンレスの皿、具のない色の濃いドロっとしたルー、
千切りキャベツ、ソースのかかったカツがお約束である。
ご飯はこれらに埋もれ、上からは見えない。

金沢滞在中、数店に足を運んだが、
ひとつの地域にこれだけ統一されたカレーがあるというのは特筆すべきことだ。
金沢カレーには「全部のせ」的なメニューが多く、これには驚いた。
トンカツだけでなく、ハンバーグやウインナー、空揚げなどなどが所狭しとのっているのである。
これはもう、食べきれなかった。

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金沢カレーの代表店のひとつ「ゴーゴーカレー」のカツカレー。金沢カレーの典型的なたたずまいだ。

しかし、なぜ金沢というか石川県という限られた地域で独自のカレーが発展したのだろう。
資料によれば、金沢カレーの代表店のひとつ「カレーのチャンピオン」創業者の田中吉和氏が、
昭和30年代にそのスタイルを確立し、弟子たち等によって石川県内に広まったそうである。

カレーという食べ物は、ラーメンと異なり、実は「ご当地カレー」というものはありそうで少ない。
ご当地カレーとは、イノシシとかサザエとか、地域の産物がルーに入っているものをいうのではなく、
作り方やたたずまいが独特のものが小生のいうところのご当地カレーである。

小生が知る限り、ご当地カレーは、
札幌の「スープカレー」、北九州は門司の「焼きカレー」、沖縄の「黄色いカレー」ぐらいである。
ちなみに、呉や横須賀の「海軍カレー」は、小生の中ではご当地カレーには入らない。

カレーといえど侮ってはいけない。
これは「食物多様性」の「物質の供給サービス」を身をもって示すものなのだ。
金沢カレーは、そのエリアで独自に進化し、
限られた地域にだけに見られる希少な地域個体群なのだ。
石川県という生息エリアの中で、メタ個体群を形成しながら遺伝子を継承している。
今のところその絶滅確率は低いが、トキのように野生絶滅とならないよう、
地域で誇りをもって永く愛していただくよう願ってやまない。

金沢には、「金沢おでん」などご紹介しなければならないものがまだまだあるのだが、
紙面が尽きた。
今回は、食物多様性金沢戦略の一端をご紹介した。

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