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宝探しの旅(2016.4)

面白探偵団

今回は、春のやさしい風に誘われて、飲み屋をはしごすることにしました。
海の香りもたっぷりなので、ぜひご賞味ください。

松江の郷土料理店にて

松江で友人と待ち合わせ、飲みに出た。
どこにしようかと夜の街をさまよった挙句、この店にしようということになった。
その店は、松江の有名な郷土料理の店「てれすこ」で、
小生は行ったことがあったが、連れは行ったことがないというので店に入った。
カウンターの奥に陣取った。

あるある。カウンターの大皿にずっとこの地の食材が並んでいる。
ノドグロやモロゲエビや白イカはよく知っているし、食べたことあるし、
そして何よりも高いので遠慮するとして、
うーん、何にしようかなあ。
とりあえず、ビール。

20センチぐらいのメカブが丸のままころがっている。
どうやって食べるのかとお店の人に聞くと、ただ焼くだけだという。
普通は刻んでネバネバになったのをポン酢で食べるけど、
丸のまま焼くなど聞いたこともないので、まず、メカブ。

メニューを見ると、「おじさんの干物」とある。
鳥取ではこの時期「ばばちゃん」という魚があるが、「おじさん」とは初めて聞いた。
「おじさん」って何ですか?と聞くと、深海の小魚だという。
宮崎では「メヒカリ」という深海の小魚を食べるが、それと同じかなと思い、これも頼む。

ビールに合いそうなので、小生はアカガイの煮物、連れは津田カブの漬物を頼む。
知らない人のために言っておくと、島根でいうアカガイは、いわゆるアカガイではなく、
少し小ぶりなサルボウ貝のことをいうのだ。
また、津田カブは紫色をした細長いカブで、このあたりの名物だ
こいつは茎と葉ともに酸味があってうまい。

で、あるじゃないか。
島根で食べるのは知っていたが、なかなか遭遇出来なかったやつ。
いつか食べたいと思っていたやつが大皿の上にてんこ盛りである。
そう、カメノテである。
これも迷わず頼む。

カメノテは、貝のように見えて、
実はこいつはこともあろうに、エビやカニと同じ甲殻類なのである。
エビやカニよりフジツボに近い。
カメノテの指というか、爪というか、先の方は硬くて食べれるようなしろもんじゃない。
カメノテの手首というか、根っこの方も鎖かたびらのようなざらざらした感じで、
これも硬くて食べれそうにない。

では、どこをどうやって食べるか。
この鎖かたびらを剥くのである。
そうすると、中から肌色の身が出てくる。
これを吸うようにして食べるのである。
食味・食感は、貝のような感じだが、もっと磯の香りが強く、ホヤが一番近いかな。
ホヤといっても、広島では食べたことのある人は少ないだろうけど。

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カメノテは、食べれるところが少なく、そんなに美味いもんじゃないけど、
磯の香と「カメノテを食べた」という事実のために食べる価値はある。
と、思う。


メカブは結構塩味が効いた食べ物だった。
「おじさん」は島根でいう「金太郎」だった。
「金太郎」は、見た目は細くて小ぶりなノドグロといった感じで、ピンク色をしている。
この地では、干物にして普通に食べる。
ま、「おじさん」の正体が分かってよかった、というところか。

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松江の郷土料理「てれすこ」。
松江駅前の飲み屋街・伊勢宮の新天地にあります。
松江においでの際は、是非どうぞ。
(写真:てれすこホームページ)


隠岐の飲み屋にて

島根の海のものといえば、数年前に行った隠岐の島でのことである。
西郷の飲み屋に夜一人で入り、カウンターに座り、メニューを眺める。
おやっ、もしかして、これは・・・「ベコのヌタ」とある。
迷わず注文する。
出てきたものを見て確信した。
アメフラシである。

オヤジさんに聞くと、間違いなくアメフラシだ。
アメフラシはウミウシの仲間で、島根では「ベコ」というのだ。
これも先のカメノテと一緒で、島根で食べるのは知っていたが、なかなか遭遇出来ず、
いつかは食べたいと思っていたものだ。
やっと会えたねアメフラシ君。

で、食べてみる。
正直、あまり美味くない。
まず、硬い。味がない。しょっぱい。
アメフラシは殻のない貝だ。
貝でもサザエやアワビは美味いが、これは干物にした味の抜けた貝のようだ。
酢味噌にまみれた貝の干物をつまみながら、いろいろと疑問がわく。

で、オヤジさんに聞いてみる。
「ベコはどこで仕入れるんですか?市場に出るんですか?」
「こんなもん市場には出ませんよ。漁師が採れたけどいらんか言うてくるんですよ」
「そのまま持ってくるんですか?」
「いいえ、漁師が浜でさばくんですよ。そうしない大変なことになります。
3,40センチのやつでも、さばくと縮んで握りこぶしぐらいになりますよ。
ほとんど水なんですよ」
「どうやって料理するんですか?」
「その握りこぶしぐらいのやつを茹でるんです。
そして切って、酢の物にしたり、ヌタにしたり・・・」

知らない人に誤解を恐れず言っておくと、アメフラシは見てくれは大変気持ちが悪い。
灰色というか、濃い紫色というか、何とも不気味な色をした、
早い話が、数十センチの巨大な海のナメクジである。
そいつが海の中で岩の上なんかを這っているのである。
しかも、こいつは、つかんだりすると紫色の液体を大量に出す。

料理はいいが、どういうルートで出回り、どこでどうやってさばくのかとても疑問だった。
疑問も解け、実際に食べることができたので、
食味はイマイチだったけど大いに納得した。

中国の海鮮料理店にて

20年前ぐらいに中国に行った(遊びじゃないよ、仕事だよ)。
厦門(アモイ)から上海のあたりは海鮮料理の店が実に多い。
同行した中国人はみんな海鮮料理が好きだと言っていた。
これらの店は共通した特徴があって、
まず、店頭はほとんど水族館というか熱帯魚屋である。
たくさんの水槽が置いてあって、魚やら、貝やら、「何やらかやら」、種類ごとに飼われている。
客は、これらの水槽を見て料理してもらう魚などを指名し、
あとは席について料理が出てくるのを待つのである。

その店頭の水槽であるが、魚や貝は別にいいのである。
「何やらかやら」が問題なのである。
びっくりしたのは、カブトガニである。
環境省レッドリストでは絶滅危惧I類であり、
岡山の笠岡などでは天然記念物に指定されているそいつが、
水槽の中で食べられるのを待っているのである。

こんなもん食べていいんかい。
ここは中国だから、環境省も天然記念物も関係ないとして、
こんなもん、どこを食うんだろう。
カブトの下にある体の部分は食べるところがあるのだろうか。
カニの足でもあれだけ食べるところがあるのだから、まあ、あるのかもしれない。
しかし、実が詰まっているようには思えないのだが。

小生は食べることがとても好きである。
食べたことのないもののことを聞いたり遭遇したりしたら、スイッチが入る。
カメノテやアメフラシのように。
で、「中国では四足で食べないのはテーブルだけ」という食の国・中国に初めて行った小生は、
期待満々、興味津々で、「僕は何でも食べます」とツアーグループの中で公言していたのだ。

この海鮮料理店の店頭の水槽には、カブトガニ以外にも「何やらかやら」が結構いたのである。
そのうちのひとつが、ミミズというか、ゴカイというか、あの手のやつがあったのだ。
まるで釣り道具屋のアオムシ状態で、
水槽の中でからまって団子になっているのを目ざとく見つけたやつがいて、
「おお、○○さんが食べるやつがいた」などと小生を呼びに来た。
おいおい、これかよ。
みんなニヤニヤして見ている。
「ああ、オレは何でも食べるよ。食べれないものはない」と言うしかないじゃないか。

テーブルで待っていると、はたして出てきました。さっきのあれが。
で、どうなっていたかというと、これが、いわゆる煮こごり状態なのである。
洋食的にいうと、ゼリー寄せ。
薄茶色の煮こごりの中に、さっきのやつが何匹も白くなって入っている。
断面は丸く中空のようである。
見た感じはいけそうだ。

食べてみる・・・貝だ。
これは貝だ。
一番近いのはアサリの水管。
食味も食感も貝のヒモである。
偽らざる気持ちを言えば、最初はさすがにちょっと後悔したが、
生きているところを見るから気持ち悪いのであって、料理されたものは何ということもない。
気持ち悪さから言うと、生きている時も、料理された後もナマコの方がずっと気持ち悪い。
ナマコは小さい時から食べ慣れているから何も考えないだけだ。

これ、結構いけるよ。
みんな、つまんでみたらどう?はっはっは。
箸を伸ばすやつは一人もいなかった。
記憶をたどるとカメノテやアメフラシよりもずっと美味しかったように思う。

カメノテやアメフラシを探して

仕事柄、どこへ行っても「まち・ひと・しごと」の地方創生である。
交付金のバラマキだとの批判もあるが、ここは前向きにとらえたい。
その地方にしかないものを発見し、それを「ひと」が動かし、
動かしたところに「しごと」が生まれ、その交流により「まち」が動き出す。
地方の宝に、そこに住んでいる人は気づかないものである。

宝にはいろいろなものがある。
人や施設やイベントだけではない。
音や匂いかもしれない。
街の猥雑さや田舎の何もなさかもしれない。
犬や猫やカラスやスズメかもしれない。
しかし、いちばん分かりやすく根源的なものは食べ物である。
食べ物はそれぞれの地域の文化に根差した貴重な宝である。
錦織くんがテレビでちょっとしゃべったとたん、ノドグロはどっと出回り、どっと高くなる。

僕はいつもカメノテやアメフラシを探している。
面白そうなもの、ウキウキするようなものを探している。
いやいや、遊び以上に仕事においてである。
次のカメノテやアメフラシには、いつ、どこで会えるかなあ。

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