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小学校はただの学校ではないのだ(2015.2)

今、学校でおきていること

このコラムで何度かご紹介したように、
近年は仕事で、またCSR活動として小中学校への出前授業をやっている。
ここ10年で、広島県と島根県であわせて延べ100校近い学校に
お伺いしているのではないかと思う。
で、最近とみに感じ、また、考えさせられることがある。
それは、児童数の減少による学校の統廃合と地域への影響である。

平成17年度に、広島県の発注で、初めて業務として環境学習の仕事をした。
この時、初めて「複式学級」というものの存在を知った。
「複式学級」とは、児童数の減少に対応して、
二つ以上の学年を一つの学級(クラス)とするものである。
例えば、5年生1人、6年生2人の計3人で一つのクラスといったあんばいだ。
複式学級の学校の給食はとても微笑ましい。
1年生から6年生まで10人くらいの子供たちが一つの教室で給食を食べている。
和気あいあいとして、とってもいい感じだ。
高学年の子どもが低学年の子どものお世話をしている。

しかしだ、ちょっと考えてみると、クラス担任の先生は、
同じクラスの中で違う学年の授業を同時並行で行わなくてはならないではないか。
どうするんだろう?

今年、島根県のとある小学校で、校長先生がこう言った。
「今、5年生はいませんから、今の6年生が卒業したら、来年は卒業式はないんですよ」
何ということだ!
政令指定都市である広島市でも他人ごとではない。
今年お伺いした広島市立湯来西小学校のクラスは、
3年生1名、4年生2名、計3名の複式学級だった。

また、最近特に気になるのが男女比のアンバランスだ。
授業を受けに子どもたちが教室に入ってくる。
女の子8人に男の子2人だ。
何ということだ!
ハーレムというより、女人国に迷い込んだ男の子という感じである。
この男の子たちは、やりにくいだろうなあ。
6年間この状態か。
分母が小さいので、年によって男女比が大きく変動するそうだ。

小生が初めて「複式学級」というものに遭遇した小学校は、
安芸太田町立殿賀小学校である。
安芸太田町では、平成16年度から平成29年度の13年間で、
児童数が401人から206人へと半減すると推測されている。
平成20,21年度には、町内の3つの小学校が統合により廃校となっている。

殿賀小学校では下表のとおり、
現在18人の児童数が、平成31年度には11人と4割も減ってしまうのだ。
また、男女比にも注目してほしい。
平成25年度は男の子4人に対し、女の子14人である。
1年生に至っては、女の子3人に対し男の子0人である。

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安芸太田町での児童数の推移と殿賀小学校での児童数・学級数の将来予測
資料:安芸太田町教育委員会.安芸太田町学校適正配置基本方針.平成25年10月


どうやって学校に通うのだ

このような児童数の減少と学校の統廃合は何をもたらすのだろうか。
まず、通学ということを考えてみてほしい。

都市計画では、まちの構成単位として「近隣住区」というものを考える。
これは、住民が日常的に歩いていける距離を500mと考え、
1km四方の区画を「近隣住区」として設定したもので、
これが概ね小学校区に相当するとされている。
即ち、小学校というものは、市街地では理論上、半径500mに1校あるものなのである。
即ち、小学校の誘致圏(通学距離)は500mが標準なのである。

image006.png
1つの近隣住区に1つの小学校。小学校の通学距離は500m。

而して、安芸太田町ではどうか。
殿賀小学校から最も近い上殿小学校まで約2.5kmである。
都市部の小学校の誘致圏500mの5倍、大人の足で歩いて約40分である。
しかし、殿賀小学校と上殿小学校はどちらも国道沿いにあり、
安芸太田町の中では最も近接する小学校で、道路事情もよい。
他の小学校間の距離はもっと大きく、道路事情は悪い。
文部科学省によれば、
通学の点からの学校の統廃合の基準は、小学校が4キロである。
この基準に照らせば、殿賀小学校と上殿小学校は統合されてしまう。

image008.png
殿賀小学校の西隣の上殿小学校までは2.5kmであるが、東隣の津波小学校までは、約7kmの道のりである。

6歳の子供が、毎日数キロ、場所によれば片道10キロ近い距離を往復するのである。
冬は、スキー場も近い豪雪地帯である。
で、どうするか。
スクールバスなのである。
しかし、登下校がスクールバスの発着の時間に縛られる、
アクシデントが起きた時の学校と家庭の連携等、
歩いて行けないことによるリスクは何かと多い。
じゃあ、歩いて行ければいいか。

昨年、島根半島の日本海に面した小さな小学校にお伺いした。
数キロごとに小さな谷戸にへばりつくように集落がある。
それらの集落をつなぐ道は、日本海に面して海からの吹きさらしをもろに受け、
人通りの少ないアップダウンの多い道である。
6歳の子供が、そこを毎日歩くのである。
冬の灰色の日本海から雪交じりの寒風が吹きつける中を。

中学校は、先ほどの都市計画の理論でいえば、4近隣住区に1校が基準である。
即ち、4小学校区に1校、誘致圏は1kmとなる。
中山間地域ではどうなるか。
人数が少なく、広い小学校区が数校集まった中学校区では、
事情はもっと厳しいものになることは容易に想像できる。
これが、高校となると、もう通えない。
好むと好まざるとにかかわらず、下宿生活を余儀なくされるのである。

交通弱者として高齢者がよく話題になる。
もちろんそれはそうなのだが、交通弱者として子どもたちのことは忘れられがちである。
子供たちこそが交通弱者であり、この問題は高齢者以上に大きな問題だと思う。
なぜならば、
それが若者たちをふるさとから遠ざける大きな要因のひとつとなっているからだ。
16歳からいやおうなしに、もうふるさとには住めなくなってしまうのだ。
地方の疲弊の根っこのひとつにはこんなことがあると思う。

小学校はただの学校ではない

先の殿賀小学校とは、環境学習のモデル校としてまる一年お付き合いした。
一年間もお付き合いしていると、
中山間地域での小学校の位置づけをあらためて思い知らされた。
中山間地域では、小学校は子どもたちが通う単なる学校ではないのである。
学校には、何やかやといつも地域の人が来ている。
曰く、福祉会、見守り隊、おやじの会などなど。

学校の学習発表会は地域の文化祭と一緒に行われる。
子どもたちの学習発表だけでなく、
大人たちの民謡、踊り、田楽、太鼓が小学校の講堂のステージで繰り広げられる。
中山間地域では、小学校は単なる教育施設ではない。
小学校は、交番、郵便局と並ぶ生活のインフラであり、
地域のコミュニティの核なのである。

学校の統廃合とは、中山間地域では、
それはとりもなおさず地域コミュニティの核の喪失なのである。
それは、限界集落の進行、廃村に直結する地域の絆の分断なのである。

image010.png
平成26年度殿賀小学校学習発表会・殿賀文化祭の様子
(「殿賀小学校だより」より)
子どもたちと一緒になって地域の人たちがつくり上げていく最大のイベント。
小学校は地域のコミュニティの核なのだ。


校長先生の声が明るい。
来年度、とある兄弟が転校してくるのだそうだ。
若い夫婦が町に転入してきて、夫婦には子どもが2人いるそうである。
その2人の入学が見込めるため、かろうじて来年度は統廃合を免れるそうである。

校長先生は知っているのだ。
この学校がなくなるということは、
地域で暮らす人々の絆のよりどころが失われるということを。

何とかしなければ。

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