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出雲の白い巨人

神の居ぬ間に・・・

11月、すなわち、旧暦の10月は、「神無月」である。
神も仏も無いようなご時勢ではあるが、なぜ神が無くなるかというと、
この月に日本中の神様が出雲大社に集まるからである。
そのため、旧暦の10月は、日本全国、神社という神社から神様がいなくなるので
「神無月」というのである。

しかし、これを逆にいうと、
その時、出雲は日本中の神様でいっぱいになるのである。
従って、出雲ではこの月を「神在月」という。

旧暦の10月10日(現在の11月23日)の夜、
国引き神話の舞台である大社町の稲佐の浜に八百万の神がやってくる。
神様は海からやってくるのである。
稲佐の浜では御神火が焚かれ、神迎えの神事が行なわれる。
来迎した神々は、依り代の榊(これを「神籬(ひもろぎ)」という)に宿る。
人々は、神々にお供して、この神籬を3km離れた出雲大社までご案内する。

出雲大社に到着した神々は、出雲大社の両側にある十九社という神社に1週間滞在し、
上宮(かみのみや)で会議をして、
旧暦の10月17日(現在の11月30日)に立ち去られるそうである。
ヤマタノオロチの舞台となった出雲を代表する河川である斐伊川の河口には、
「からさで大橋」と「神立(かんだち)橋」という2つの橋が架かるが、
「からさで」は漢字で「神等去出」と書き、「神立」は「神の旅立ち」の意で、
どちらも神々がお帰りになる場所に近いところにあることから名付けられた。

出雲弁でぇぁ

出雲では、この期間、神々の会議を邪魔しないように、
「お忌みさん」といって音を出す工事や歌舞音曲などはもとより、
掃除や爪切りまで慎む風習があるそうである。
また、出雲は和風スイーツの定番「ぜんざい」の発祥地といわれているが、
これは「神在(じんざい)」が出雲弁でなまって「ぜんざい」になったものといわれている。

この出雲弁とういのがまた独特である。早い話が、いわゆるズーズー弁である。
広島弁もなかなかのもんじゃけど、出雲弁は中国地方の中では飛び抜けて異質でぇぁ。

東北からはるか離れたところに、なんでこんな言葉が残っているのだろう。
松本清張の「砂の器」では、ズーズー弁が犯行を解く鍵になり、
刑事たちは東北に向かうのだが、手がかりが無く袋小路に入りかけていたときに、
ひょんなことから出雲弁に思い至り、事件は解決に向かって動き出すのである。

出雲弁は、標準語にない母音がたくさんある。
単語を伸ばしたり、
単語の後ろに「ぁ」とか「ぇ」とか小さなひらがながやたらつく感じである。
ちょっと文字では表せないが、たとえばこんな感じである。

おでんのでぇぁーこん、どげなっちょ〜かぃや〜。
 (おでんの大根、どうなってる?)
そげぇぁ言わんこう、てつどうてごせぇ、はようにぇえーだわにぇぁ。
 (そんなこと言わずに、手伝ってよ。早く煮えるから)


八百万の神は出雲弁が理解できるのであろうか。

白い巨人たち

この八百万の神が行き来するそんな出雲の神々しい山々は、今、大変な賑わいである。
神か、はたまた怪物か。
白い巨人たちが立ち並んでいる。
風力発電の巨大な風車群である。

宍道湖を挟んで向かい側の島根半島に26基、
山陰の幹線道路である国道9号沿いに出雲市に2基、
近くの江津市に20基。

再生可能エネルギーの波により、今後も新たな建設計画がある。
神在月に出雲にいらっしゃる神様たちが“Bird Strike”ならぬ
“Kami Strike”に遭遇されないかと心配である。

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神話のふるさとの日本海沿いに立ち並ぶ白い巨人たち。
初めて見る人はびっくり。(島根県江津市


再生可能エネルギーの環境学習

地球環境問題やエネルギー問題が毎日のように新聞やテレビを賑わせている。
島根県内の小中学校に出向き
再生可能エネルギーについての出前授業を行なう業務を、
3年前から島根県より委託を受けて行なっている。
先に述べたように、島根県内にはたくさんの風力発電があり、
森林、すなわち木質バイオマス資源にも恵まれている。
島根県は再生可能エネルギーの普及啓発の一環として
この事業を推進しているのである。

期せずして、
先年から小学校6年の国語の教科書で再生可能エネルギーがとりあげられ、
ぴったりのタイミングで先生方には大変喜ばれている。
再生可能エネルギー自体に関する教材は学校や学習指導要領にはなく、
その現状や課題、必要性について先生方は教えるすべを持たないのである。
出前授業は発展学習の取っ掛かりになり、だから喜ばれるのだ。

では、教科書で何を教えるのか。
学校では再生可能エネルギーの仕組みを教えるのではない。
国語の単元であることがミソである。
ねらいは、論理的な文章の構成、調べ学習への発展である。
そのために、教科書では、風力発電を題材に、長所と短所を述べ、
今後のあり方に言及している。

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東京書籍の国語の教科書。
エネルギーの話が理科でなく国語で出てくる意味を考えよう。


この「再生可能エネルギー教室」の中核をなすのが、
「ピラミッドランキング」というプログラムである。

子供たちに様々なエネルギーの話をしたうえで、
グループに分かれて作業をしてもらう。
作業は、グループで話し合い、
提示した8つの発電方法のうち今後重要性が高いと思うものを順に6つ選んで
下図のような用紙に貼り付けてもらうのである。
8つの中から6つを選ぶのであるから、必ず2つ余る。
作業が終了したら、
①なぜそれを1番にしたのか ②なぜその2つを除外したのか
の理由を発表してもらう。

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これが「ピラミッドランキング」です。
エネルギーに限らず、内容を変えていろいろなワークショップで使えます。


これまでこのプログラムを十数校でやったが、
1番にあげられるものはさすがに「太陽光」が多いが、
大人の意に反して様々である。
「原子力」を1番にもってきたグループもあった。

意外なのは、「ごみ発電」が結構多いのである。
この答えを出すグループには、
必ず「じゃあ、もっともっとたくさんごみを出した方がいいのかな?」
と問いかけるのだが、
「うーん」となってしまって、なかなか答えられない。
子供たちの考えは、「ごみを無駄に燃やすぐらいなら、発電すべきだ」
というのが趣旨なのだが、
それをうまく論理だてて表現できないのである。
これが再生可能エネルギーが国語で取り上げられる所以であろう。

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子供たちなりに話し合いながら作業を進めます。

このプログラムは、大人のグループでやってもおもしろい。
大人でやるときは、前段として、
トレードオフやLCA(ライフサイクルアセスメント)、
予防原則などの複雑で難しい社会的な問題をいろいろ話したうえでやる。
大人でやると、まずグループ内での議論が白熱し、
グループとしての統一見解がなかなか出せない。
グループ発表でもまた他のグループとの議論が白熱する。
大人の場合は、例えば原発は絶対反対とか
「かくあるべき」という確固たる意見を持っている人が少なくないためである。

異なる意見を尊重する。
もっといえば、異なる意見を出し合える場がある。
ということが、とても重要であるということを合わせて伝えるようにしている。

image012.jpg
大人でやってもおもしろいプログラムです。

神様のテレビ会議?!

出雲大社に集合した日本中の神様は、
いったい何について会議をされているのであろうか。
まさか日本の今後のエネルギーのあり方についてではなかろう。

今の時代、“Kami Strike”も危惧される白い巨人が林立する危険なルートを通っていらっしゃらなくても、
テレビ会議という手段もあるのだが。
いやいや、マスコミに出てはまずい話もあるのかもしれない。
もしテレビ会議なら、
出席者のプライバシーに配慮して原則非公開、一部のみ不完全公開で、
音声なし、動画は一部モザイクになるのかなあ。
突然、イラついた親分から「あれはどうなってるんだ」とか
「今すぐ行くから」とか言われても困るしなあ。

神在月に出雲大社に集合した八百万の神様は、
男女の縁などについて話し合っておられるのである。
そしてそれは、将来の伴侶を決める話し合いゆえ、人知を超えたものなのである。
これを「神議り(かむはかり)」というそうである。
人間界のような、がさつなテレビ会議は必要ないのである。

出雲大社は縁結びの神様である。
どうかあなたにも、いいご縁がありますように。

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