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隠された法則

セミの異変
「秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」(古今和歌集)
好きな歌である。
さりげない古今的な技巧の中に共感できるテーマが語られ、よくできた歌である。
以前は、お盆を過ぎれば、夏の暑さや陽射しの中にも秋の気配が感じられ、
行く夏の寂しさを心に感じたものであるが、
このごろときたら、盆明けはもとより、9月いっぱいは猛暑日が続き、延々、夏である。

夏といえば、それはもう、「セミ」である。
小生の夏のイメージは、おしつけられるような熱く眩しい陽射しと、
ある範囲に、また地域全体的にうっそうと包まれるセミの声である。
梅雨の頃は「ジッ…」くらいの情けない鳴き声が、
盛夏ではもうその一帯がハウリングをおこしているような、なんとも文字では表せない音になる。

が、ここ数年、特に今年は、そのセミの鳴き声が少ないと思いませんか?
例年、こんなもんじゃないと思う。
しかも、よく注意していると、今までは「ジーーーーー」のアブラゼミやニイニイゼミの中に、
時に「ミーンミンミン」のミンミンゼミが混じる鳴き声だったのが、
今はそこらじゅう「シャワシャワシャワシャワ」である。そう思いませんか?
夏の終わりに道路の上にひっくり返っているアブラゼミやニイニイゼミも見ない。
「シャワシャワシャワシャワ」はクマゼミである。
都会では、明らかにクマゼミが増え、アブラゼミやニイニイゼミが減っているように思う。
理由は、温暖化だといわれている。

image001.jpg
めっきり増えたクマゼミ。シャワシャワと大きな声で鳴く。写真:淀屋橋心理療法センター

君は17年間何をしてきたのだ
セミで興味をそそられるのは、何といっても「17年ゼミ」である。
17年ゼミはアメリカに生息するセミで、17年ごとに大量発生する。それ以外の年には発生しない。
アメリカには他にも13年ゼミもいるそうである。なぜ、17年や13年なのか。

17と13は素数である。素数はその数以外に約数を持たない。
素数の年ごとにどっと生まれると、捕食者に数の力で対抗することができる。
また、近縁種との交雑を避けるための進化であるという説もある。
しかし、面白いことに、13の前の素数である11や17の次の素数である19による
11年ゼミや19年ゼミはいないそうである。
もし、11年ゼミがいて19年ゼミがいないのなら、
「素数ゼミは進化の途中で、現在は17まで来ました。将来は19年ゼミも出現するでしょう」
といえるのだが。

いずれにせよ、長い進化の過程でこのように淘汰されたのは興味深いことであるが、
小生が注目するのは、17年というその長さである。
これは、17年生きるということである。
犬や猫じゃない。昆虫だよ。
犬や猫の寿命は十年ちょっと。20年も生きれば大変な長生きだ。
虫の分際で犬や猫よりも長生きとは!
一緒に生まれた人間ならば、なんと高校2年生である。
しかし、生まれて以来この方、高校2年生になるまで木の根にしがみついてじっと土の中で暮らし、
地上に出ればあっという間に死が待ち受けている。
カゲロウよりもはかない人生、いや、虫生だ。

君(僕)はいったい17年間(五十数年間)何をしてきたのだ。
君はいったい何のために生きているのだ。
君の生甲斐は何か。
君の生き様はそれか。
死は明日かもしれないのに。

「空蝉」(うつせみ)とは、本来はセミの抜け殻のことであるが、
転じて、この世、またはこの世に生きる人間のことを言う。
中身のない、むなしいもの・・・

自然は数学が支配していた!
セミでも知っている素数というものは、古くから数学上の一大テーマであった。
素数に関してはいろんな話があるのだが、
数学では素数の分布-要は素数を数式の形で表すことを究極の目的としてきたが、
それはいまだ達成されていない。

素数ゼミのように数学と関係する生き物の話でおもしろいのがフィボナッチ数である。
フィボナッチ数というのは、難しいものではない。
0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34…という数列である。
前の2つの数を足したものが次の数になる数列である。
すなわち、0+1=1,1+1=2,1+2=3,2+3=5,3+5=8…である。
このフィボナッチ数が自然界のいろいろなところで顔を覗かせるのだ。
次の図を見て欲しい。
フィボナッチ数を半径とする四分円を次々とつなげていったらこんな図になる。
一目見て、そう、貝だ。まさに、オウムガイ、アンモナイトだ。

image004.gif

これも一目瞭然。木の枝分かれだ。よく見ると、ここにもフィボナッチ数が。

image006_20120903102317.gif

植物の花びらの数や葉の付き方はフィボナッチ数と関連している。
ヒマワリの花弁(種)の並びや松ぼっくりの笠の並びもフィボナッチ数に従っていることが知られている。

image007_20120903102316.jpg
写真:淀屋橋心理療法センター

自然の造形は、数学の法則に従っているのだ!
「前の2つの数を足したものが次の数になる」という法則が、自然のある部分を支配しているのだ。
自然の仕組みと大いに関係しているのだ。

フィボナッチ数の不思議
このフィボナッチ数は不思議な数で、様々な特徴がある。
フィボナッチ数を順にたしてみる。
1+1+2+3=7
1+1+2+3+5=12
それぞれの答えの7は8-1、12は13-1である。この8も13もフィボナッチ数である。
フィボナッチ数を順にたしていくと、
たしていった最後のフィボナッチ数の2つ後のフィボナッチ数から1をひいた数になる。

今度は、フィボナッチ数を順に2乗してたしていく。
image035.gif
=5×8
2乗してたしていったものは、最後のフィボナッチ数とその次のフィボナッチ数をかけたものになる。

さらに、フィボナッチ数の隣り合う2つの数の比をとっていく。
image037.gif
この分数を小数に直すと、
image031.gif(=0.6180339…)
に収束することが知られている。
image031.gif
は、x2-x-1=0の正の解
image033.gif
の逆数である。
image033.gif
は、「黄金比」と呼ばれる数字である。

黄金比とは、デザインの基本の古くから知られる最も美しいプロポーションの比率で、
概ね8:5である。
ミロのビーナスやパリの凱旋門などをはじめ、
身近なところでは名刺などのカードの縦横比など多くの造形に採り入れられている。
なんとフィボナッチ数は、かの黄金比と深い関係にあったのだ。
何ということだ!

パスカルの三角形
下図のような「パスカルの三角形」といわれるものがある。

image036.png

パスカルの三角形は、高校で習うimage043_20120903110242.gifの展開(二項展開)の係数を
三角形のかたちに並べたものである。
といえば難しそうに聞こえるが、これも難しいものではない。
まず最上段に1を置き、それより下は右上と左上の数をたした数字を配置し、
これを繰り返したものである。

このパスカルの三角形もフィボナッチ数以上に不思議な数で、様々な特徴がある。
いちいち説明するのが面倒くさいので、下の図を見ていただきたい。

image039.gif

ちなみに、「三角数」というのは、下図のようなものである。

image041.gif

「四面体数」というのは、この正三角形が正四面体になったものである。

実は、パスカルの三角形にはフィボナッチ数が隠れている。
三角形を斜めに桂馬跳びのような形でたどっていったライン上の数字の和は、
なんと!フィボナッチ数になっているのである。

image043.gif

自然の奥にある不思議と美しさ
高校のとき、箱田先生という数学の先生がいた。
箱田先生は有名大学を出て、周りはみんな教授になったが、
自分だけは一介の高校教師の道を歩んだと誰かに聞いた。
箱田先生は、ちっちゃなおじいさんの先生で、いつも白いシャツにズックを履いていた。
箱田先生は決して怒らない。
箱田先生は決して大きな声を出さない。
箱田先生はいつも穏やかに微笑んでいる。
箱田先生の授業はどんどん脱線する。
教科書なんかあってないようなものだ。
いつもは騒がしい悪ガキどもも箱田先生の授業はみんな一言も聞き漏らすまいと、一生懸命聞いた。

箱田先生は、二項定理の話から教科書をはずれ、パスカルの三角形の話をし始めた。
箱田先生は、パスカルの三角形に隠された秘密をどんどん明らかにしていく。
みんなのめりこんで聞いている。
最後に、箱田先生はみんなを見回すともどこか遠くを見つめるともわからない視線でいつもこう言うのだ。
「美しいですよね。何て美しいんだ。なぜこんなに美しいんだ。数学は。とても美しいんですよ。」

想えば、このようにして、
僕は、自然の奥にある不思議と美しさに目を向けることを教えてもらったのだ。

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