2011年09月 | ARCHIVE-SELECT | 2011年11月

| PAGE-SELECT |

≫ EDIT

20年後、あなたは・・・

イチョウ-この素晴らしくも珍なるもの

秋きぬと目にはさやかに見えねども、イチョウを見れば一目瞭然である。
通勤で毎日歩く平和大通りにイチョウの木がある。
夏の終わりからもうすでに丸っこいギンナンをたわわにつけ、
黄色い大きな炎は街の中でひときわ目立つ。

イチョウというのは奇妙な木である。
イチョウは広葉樹だろうか、針葉樹だろうか。
葉っぱは広いが、広葉樹にしては葉脈の走り方がおかしい。
いちょう・・・じゃなくて、いちおう針葉樹とされるが、
広葉樹でも針葉樹でもないという説もある
(じゃあ、いったい何なんだ)。

イチョウは落葉針葉樹である。
秋になれば紅葉して、落葉する針葉樹ってありか?
それがそれなりにあるのである。
カラマツ、メタセコイヤ、ラクウショウなどが落葉針葉樹である。

それ以上にイチョウがヘンなのは、イチョウには精子!があるのである。
おいおい、植物なのに精子かよ。
植物の♂の生殖細胞は花粉でしょう。
高等な被子植物は花粉で受精するが、
コケやシダなどの原始的な植物は精子を放出して水に泳がせて受精する。
実はこの進化の過程をつなぐのがイチョウなのである。

イチョウは春に雄花が咲き(目立たないけど)花粉を飛ばす。
花粉が若いギンナンの内部に取り込まれると卵が作られ始める(卵!だぜ)。
花粉は花粉管を伸ばし、その中に精子を作る一方、
ギンナンの中では精子が卵まで泳ぐ花粉室(まるで子宮!だ)が用意され、
精子はこの花粉室の中を泳いで卵と受精するのである。
しかも、このイチョウの精子を発見したのは日本人なのだ。

1896年(明治29年)、東京大学の平瀬作五郎はイチョウの精子を発見した。
この精子を発見したイチョウの木は、現在も東京の小石川植物園に残っている。

20111001-01いちょう
まだ葉が青いうちから着々とギンナンは・・・その中では精子と卵子が・・・

イチョウは漢字でもいろいろに表される。
銀杏、公孫樹、鴨足。
「銀杏」は最もなじみがあるのではないだろうか。
銀色のアンズ・・・すなわち、ギンナンである。

イチョウは植えてから実がなるのに時間がかかる。
植えた後、孫の代になって実が食べられるようになるというので「公孫樹」と呼ぶのである。
「鴨足」は葉っぱの形からきている。
たしかに水かきのついた鴨の足の形である。
ちなみに、「鴨足」はイチョウの原産地の中国語読みで「ヤーチャオ」であり、
これが日本に入ってきて「イチョウ」になったのである。


中国残酷物語・夢物語

さて、本家中国でのその「鴨足」についてである。
四本足は机以外、二本足は両親以外、
飛ぶ物は飛行機以外は何でも食べるという中国である。
鴨の足も食べるのだろうか?
小生も中華料理屋で鶏の足だけを使った料理を見たことがある。
鶏の足は「モミジ」と言い、別に中国じゃなくても日本でも食べる地域がある。

鴨ではないが、中国ではガチョウ(鵞鳥)の足が最高の食材のひとつとされている。
食材としてのガチョウといえば、なんといってもフォアグラである。
肥大させたガチョウの肝臓である。
それが中国では足なのである。
足なのに「鵞掌」という。
問題は、その料理の仕方なのである。

清の時代の料理書によれば、その料理法は、まず油を煮え立たせ、
その中に生きたガチョウの足だけ突っ込む。
もがき苦しむガチョウのころあいを見計らって引き上げ、
池の中に放して泳がせる。
これを数回繰り返すと、その足は厚さ数センチに腫れ上がるそうである。
これを食すのである。

また、別の方法は、地面に金網を張り、その下で炭火を起こし、
そこにガチョウを追い込むというものである。
なんとまあ残酷な料理の仕方であろう。
しかも、食すのは足だけで、あとは全部捨てるというのである。
従って、一回の宴席で数十羽のガチョウを(足だけ!)使うそうである。
日本人の感覚からは信じられない・・・というのを「棚に上げる」というのである。
アジでもイカでもいい。
生き造りを見よ。
生きたまま身を切り刻まれ、まだ動いているではないか。
シロウオでもホタルイカでもいい。
踊り食いを見よ。
生きたまま噛み砕かれるではないか。

20111001-02鶏足の煮込み20111001-03鵞鳥の煮込み
鶏足の煮込み(左)と鵞掌の煮込み(右)

しかし、中国の高級食材は、フカヒレにせよ熊掌にせよ、
動物の体のほんの一部だけ使い、あとは捨てるというものが多いのは確かである。
フカヒレを取るため、尾びれと背びれを切り取られたサメが、
血を流しながら、身をくねらせながら(泳げない)、
海に沈んでいく映像を見たことがある。
美食とはむごいものである。

かくもむごい中国の食であるが、美しい話もある。
食べ物ときたら、酒である。
中国の酒は大きく2つに分けられる。
白酒と黄酒である。

白酒とは蒸留酒で北方の酒、黄酒とは醸造酒で南方の酒。
そして、黄酒を熟成させたものが老酒である。
老酒は各地で作られるが、浙江省紹興市が昔から主要生産地であることから、
ここで作られたものを紹興酒という(実際は紹興市以外で作られた紹興酒も多いが)。
紹興酒の中でも熟成期間の長いもの(陳年)を「花彫」という。
この「花彫」は別名「女児酒」ともいう。

中国では女の子が生まれると、大きなカメいっぱいに黄酒を仕込み、
庭に埋めておくのである。
で、どうするか・・・かくして20年後、
その娘が嫁ぐ時掘り出して、披露宴で振舞うのである。
黄酒は20年の歳月を経てかさは減り、琥珀色は濃く、
熟成した花彫になっている。
娘の誕生とその時酒を仕込んだ思い出とともに、タイムカプセルを開くのである。
20年前に20年後のために仕込んだタイムカプセルを。


20年後の姿

あなたは20年後をイメージできるであろうか。
20年後の自分はどうなっているか、20年後の世の中はどうなっているか。
娘のためでなくとも、自分のこととして想像(Imagine!)してみよう。

2030年、日本人の価値観は大きく変わり、
可処分所得ではなく、可処分時間を重視するようになっている。
人口も大都市圏ばかりに集中するのではなく、適度に分散されている。

その核になるのが、適度な大きさのコンパクトシティで、
その郊外には豊かで元気な農村と山村が広がる。
食料自給率は約70%に達しており、林産物は100%が自給されている。
こうした農地や山林は、農業や林業生産に使われるだけでなく、
多面的な機能を発揮している。

日本全体としては依然工業立国であることに変わりはないが、
環境技術で世界のリーダーシップをとるようになっている。
このように環境と農業を重視することにより、
持続性が高く、また資源的にもほぼ自立した国となっている。
さらに、付加価値の高い農産物は、海外でも人気が高まっている。

いかがであろうか。
これは国交省国土計画局が作成した
「2030年の日本のあり方を検討するシナリオ作成に関する調査概要」
の4つのシナリオのうち、環境・農業を重視するシナリオである。

20111001-04未来社会のイメージ
環境・農業を重視するシナリオの未来社会のイメージ(国交省国土計画局)

国交省はこのシナリオにおける最重点課題として以下の3つをあげている。
 ①諸外国との関係向上
 ②新たな価値の創生
 ③環境利用のシステム転換
また、これらの課題を達成するために、さらに以下のことが必要になるとしている。
 • 環境・農業を重視した社会を作る
 • 環境資源エネルギーのシステム転換
 • 地域のシステムエネルギー、"自然に学ぶ"技術などの開発
 • 経済と社会の再活性化
 • 地方都市の重層的ネットワークを作る
 • 新しい国際関係(日米関係、アジアとの関係の見直し)
 • 女性、若者が直接意思決定に参加

20年後の2030年が重要なのは、
わが国の高齢化はこの頃ピークを迎えるからである。
大きな塊の「団塊の世代」が80歳を超え、
団塊ジュニアが定年の60歳にさしかかるのだ。

「2030年問題」といわれている問題がある。
「2030年問題」とは、狭義には、現在40代のひきこもりやニートが
年金受給年齢に達することによって起こる問題のことをいう。
ひきこもりやニートは親をたよって生きているといっても過言ではない。
その親と死別すれば・・・。

また、広義には、団塊ジュニアが未婚や離婚、
親との死別により単身世帯(核家族ではない)、
すなわち一人暮らしの高齢者が急増することをいう。
これを「弧族」という。

今はいい。
一人だが、友達もそれなりにいる。
仕事は忙しい。
不満を言えばきりがないが、毎日毎日がそれなりに流れていく。
でも、それがいつまで続くのか。
親は先に死ぬ。
定年になり、会社との縁が切れたとき、気づけば一人・・・。

20年後、世界の人口は10億人増えて80億人を超える
20年後、日本の高齢化率は30%を超える
20年後、世界の気温は0.4℃上昇する

20年後、消費税は20%になっている かもしれない
20年後、再生可能エネルギーが普及して原子力発電所がなくなっている かもしれない
20年後、1ドル60円台になって日本から製造業がほとんどなくなっている かもしれない

20年後、ワールドカップで日本が優勝している かもしれない

20年後、あなたは・・・

| コラム | 13:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT |