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環境の根っこ

高野山へ

今年のゴールデンウィークは、前から一度行ってみたかった高野山へ一人で行った。

一般的にいう高野山というのは、高野山という山があるのではなく、
1,000m級の山々に囲まれた山岳盆地に集積する寺院や集落のことをいうのである。
これらの寺院や集落は、山中に忽然と現れる東西6km、南北3kmほどの細長いエリアに
宗教都市をかたちづくっているのである。

もちろん、金剛峰寺や壇上伽藍、奥の院などの高野山の寺院を訪ね歩くのが目的ではあるのだが、
もう一つ目的があった。
この山岳盆地に展開される「高野山」という空間を見てみたかったのである。
それは、高野山が「八葉蓮華」の地といわれるからである。


201106-01高野山


八葉蓮華とは

「八葉蓮華」は仏教用語であり、辞書的には「極楽浄土にある花弁が8枚のハスの花」のことである。
しかし、ここは高野山である。
真言密教の聖地である。

八葉蓮華について高野山霊宝館の解説によれば、
高野山の周囲の山々である外輪山を古来より外八葉と呼び、
内輪山を内八葉と呼ぶ。

内外16葉の山々を金剛界曼荼羅の十六大菩薩に相当させ、
蓮の花を象徴する曼荼羅の中心に高野山があるとしている。

ここに至って八葉蓮華は、極楽浄土に咲くハスの花ではなく、地形・地物に姿を変えている。
しかも、かなりの精神性に基づいた地形・地物・・空間である。

201106-02地形


では、空間のあり方としての八葉蓮華をよくみてみよう。

八葉蓮華は2つの要素から成っている。
すなわち、「その場所」の周囲を取り囲む山々と、
世界の中心である「その場所」である。

山々の存在は、「その場所」が世俗から遠く離れた天に近い上の方にあることを示している。
そしてこの山々は結界となっており、
しかるべき条件を満たしたものでなければ入ることはできない
(高野山は女人禁制であった)。

結界に囲まれた「その場所」は、
ここに至る幾重にも重なった山々とは劇的に異なる幽玄の平地で、
聖なる領域であることを印象づけている。


201106-03幽玄の平地

高野山へは、紀ノ川沿いの橋本で南海高野線に乗り換えて行く。
橋本の標高は100m弱、高野山の標高は約800m。一気に700mも上るのである。
聖地は俗世間を隔てた天の方向にある。

宗教都市高野山に着く。
聖地の中央の壇上伽藍、その中心の根本大塔に立つ。
胎蔵界と金剛界の曼荼羅、すなわち宇宙をここに再現しようとした空海を思う。
空海が生きた今から1200年前のことをこの地で思う。


風水と四神相応

風水ブームである。
パワースポットブームである。
風水というのは、陰陽五行説をもとに、
「気」の流れから都市や建物の位置を判断するものであり、
本家の中国では特に墓の位置を決定するものであった。
しかるにわが日本では、九星気学などの変形になってしまい、
家相はまだしも、インテリアやアクセサリーまで風水とは、
風が吹けばミネラルウォーターが売れるといった感じである。

風水の中にはいろいろな思想があるのだが、
日本では特に四神相応の思想が取り入れられた。
高松塚古墳やキトラ古墳のあの絵である。
すなわち、
背後(北:玄武)を山で守られ、
前方(南:朱雀)に水を抱き、
左右(東:青龍、西:白虎)は丘陵に囲まれた場所を
蔵風得水(風を蓄え水を集める)といい、理想の場所とした。
平城京や平安京など古来より都は必ず蔵風得水の地に作られた。
気をつけてみると、出雲大社、鎌倉などこれにあてはまる例は多い。


日本をかたちづくってきたもの

一般的にいう「環境」は、
大気・水質や廃棄物などの「生活環境」、
動植物や生態系などの「自然環境」、
緑や環境美化などの「快適環境」、
地球温暖化や省エネなどの「地球環境」
のカテゴリーに分けられてきた。

環境は、もともと裾野の広い分野であるが、
その中で、とても重要なのだが、カテゴリーにぴしっとあてはまらないものがある。
風土、文化、歴史、景観といったたぐいのものだ。
そう、「八葉蓮華」や「蔵風得水」などである。

日本人の精神世界がその文化をつくり、
それが日本の自然と一体となってまちやむらをつくり、
風土となり、
景観をかたちづくり、
それが積み重なって歴史となっていく。
それが最も根っこにある「環境」ではないだろうか。

4月最後の日、まだひんやりと、しかし凛とした高野山の朝の空気の中で、
その思いを強くした。

南無大師遍照金剛。


201106-04精進料理

宿坊に泊まって、精進料理と般若湯!をいただきました。

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